苦楽歳時記
vol.7 バナナ
2012-10-24
一年を通じて、廉価で容易に手に入るバナナ。希少価値の高かった一九五〇年代には、バナナは格好のお土産としてもてはやされた。
「竹富島竹なしバナナ実らせて」(鈴木真妙女)。バナナの季語は夏であるが、一九八四年の盛夏、ロサンゼルス・オリンピックでバナナが脚光を浴びた。
大会期間中に、アメリカ選手団のために用意されたバナナの量は一二〇トン。アスリートたちのメダルラッシュに伴い、即効性のあるエネルギー源として、バナナは一躍有名になってしまった。
その後、バナナは白血球を活性化、免疫力を高める食品として注目される。特に黒い斑点(シュガースポット)が入ったものほど効果が高い。帝京大学薬学部の山崎正利教授は、既存の免疫増強剤に匹敵すると言う。
毎年夏になると、無性に読み返したくなる小説がある。それはJ・Dサリンジャーの『バナナフィッシュにうってつけの日』。短編小説の醍醐味に浸れる一編だ。
名著は、いつでも手の届く場所に置いておきたい。折に触れて読み返してみたい。バナナを頬張りながら、時には時間をかけてじっくりと繙きたい。
古本屋で吉本ばななの『王国』を手にした際に、「おやっ」と思った。この著書が発行された二年前から、ペンネームが「よしもと・ばなな」に改名されていた。
「よしもと・バナナ」、「ヨシモト・ばなな」、「吉本・ばなな」、立ち読みをしながら、しばし考えてみたが、やはり全部ひらがなの方が彼女らしい。
週末の朝、近隣にある運動場周辺を散歩。サッカーの試合が始まっていた。ロングシュートが決まった瞬間、ペレのバナナシュートを彷彿とさせた。八月七日はバナナの日。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

