後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第195回 書道研の現代書七人展をみて
2012-10-24
米国書道研究会の「現代書七人展」をひと周り。
主宰者の生田博子、加柴律子、ラモス逸子三氏の書いた「花」のひと文字に、思いを巡らせました。
生田博子師は花追う人で、作品「露なき花・・」と作品「木槿の花よ・・」にそれぞれ二つ、合わせて四つの「花」を配し、淡い詩界にいざないました。
とりわけこの目を惹くのは「露なき花・・」の「花」の位置。筆勢のにおい、墨の淡さ、余白の美しさに、心が静まりました。
門下の人は師承を得ようと努めています。
例えば加柴律子書の「花咲く枝」の「花」、ラモス逸子書の「沙羅双樹の花の色」の「花」、奥達子書の「老若男女」の「老」に、師匠の書かと見紛う筆致が伝授されていました。
生田観周氏の遺墨「協調」をどう鑑賞したらよいのでしょう。
まるで月下の門。
柿渋の色紙に展開される静のドラマは隷書にあらず、さりとて篆書とも断じ難いたたずまい。
観周氏ならではの思惟が込められ、とりわけ「協」の奏でる創造性はピカソのキュービズムか、と思わせる美の造形でした。
★ ★
雄渾という文字は松岡八十次氏のためにとっておきましょう。精魂こめた大筆の書「不尽」は、この文字さながらに尽きないエネルギーを秘めています。
山本美稲書の「天翔る龍」はまるでひと塊のつるぎ。
「颯」、「和気藹藹」における風雅の涼やかさ。奥達子書の「翔」「憩」、加柴律子書の「花咲く枝」とともに趣味のよさが香っています。
松永満智子書の「お母さんが・・」はほほえましい小品で、「母」を母乳にみせたデフォルメに、軽い茶目っ気が覗いています。
硬派書道家の中村達司氏と話しました。郷里鹿児島の偉人、西郷隆盛の「敬天愛人」を墨したのにうかない顔。
原因不明の体調不良で、「やる気が出ない」とポツリ。敬する隆盛公に倣って元気を出しましょう、中村さん。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

一九六四年時事通信社入社。旧通産省、旧農林省、旧大蔵省を担当後、ロサン








