後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第184回 ドラッカーの「リーダーの条件」
2012-08-29
二○○○年当時、経営の神様といわれたピーター・ドラッカー氏はポモナ・クレアモント大学院の教授でした。
講談社の編集スタッフを連れてお会いしたとき、「人をほめなさい。けなすばかりでほめない人は駄目だ」といわれた。
過去にも立派な人々に立派な助言をいただきました。
しかしこのときの教授の口調ほど、やさしくもずしりと重い言葉に接したことはありません。
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彼は理想のリーダーを選ぶのに著書で「五つの条件」を挙げています。
その一。長所より短所に目を向ける者をリーダーにすべきでない。やがて組織の精神を低下させてしまうから。
その二。何が正しいかより誰が正しいかに関心をもつ者をリーダーにすべきでない。やがて組織を堕落させるから。
その三。誠実さより頭のよさを重視する者をリーダーにすべきでない。人間が未成熟な証拠で、その性癖は一生治らないから。
その四。部下の脅威を感じている者をリーダーにすべきでない。「俺のようにやれ」などと空威張りするから。
その五。自分の仕事に高い目標を掲げない者をリーダーにすべきでない。やがて部下の軽蔑を生むことになるから。
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私を感動させたあのひと言が「その一」で謳われています。
日本の文化と習性はその道の初心者や未熟者の短所ばかりを突き、我慢と修行を強要します。
落ち込む者をムチで追い、一向にほめません。日本文化の根源にいじめが潜んでいます。なぜもっと人の長所をみてほめてくれないのでしょう。
「その二」、「その三」も大事なことに触れています。「頭がよい」とか「出来が悪い」とか、学歴だけで決め付けるのは日本人の特徴です。偏差値しか頭にないかのよう。
私たちに共通するこの人間評価は「人間が未成熟な証拠だ」とドラッカー氏はいっています。
しかも一生治らない性癖、とサジを投げています。「五つの条件」はもはや日本人に向けた「警告」といえないでしょうか。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

