苦楽歳時記
vol.3 カレーライス
2012-08-02
小学生のころ、友達とカレーライスとライスカレーの違いについて議論したことがある。一九七〇年代前半にククレカレーのTVCМで、「ライス多けりゃライスカレー、カレー多けりゃカレーライス」というキャッチコピーがあった。
ウィキペディアよると、ご飯とカレー・ソースが別々に、あるいは横長の深皿で左右に寄せて出されるものがカレーライス。ご飯の上にカレーをかけたものがライスカレー。
全国の小中学校では一九八二年一月二二日に、一斉にカレーライス給食が始まったことから、一月二二日は「カレーの日」に制定された。
ひと頃、サンセットにあったタイ料理のレストラン『チャンダラ』に、足繁く通ったものである。目当てはチキンカレー、僕は『チャンダラ』のチキンカレーの好味に、魅了されてしまったのだ。
何と言っても、おふくろの味のカレーライスが一番美味い。帰国するたびに一度は味わう。
おふくろカレーは、牛ひき肉を使う。タマネギをキツネ色になるまで炒めて、極めつけは鰹の出しを十分に利かす。隠し味はカキ油とココア。
関西ではカレーの中に生卵を落とすが、これも好き好きである。当世風は塩麹を入れる。
三十五年前に、大阪は南の千日前でカレーライスの美味しいレストランがあると聞き、竹馬の友と二人で赴いた。
先ず店に入ると、「トラは死んで皮をのこす 織田作死んでカレーライスをのこす」と書かれた額が、目の中に飛び込んでくる。
織田作之助は小説『夫婦善哉』の中で、『自由軒』のカレーライスを描写している。いわば、織田作によって『自由軒』のカレーライスは有名になった。
カレーライスを食べ終わって、友は紙ナプキンになにやら書き込んでいる。僕はそれを見てクスッと笑った。
「トラは死んで皮をのこす 織田作死んでカレーライスをのこす 客はまずくてカレーをのこす」。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

