Alice in WINEderland
Vol. 5 Sanguis Wine
2012-03-27
1月に開催されたワインの祭典STARS of Santa Barbaraの会場で「気になる」魅力を放っていたワイナリー、サングイス。テーブルに並べられたワインボトルは、それぞれ全く異なるアーティスティックなエチケットで飾られ、その端には歌詞のワンフレーズのような名前が添えられていた。ワインもユニークで、フランス南部・ローヌ地方の主要な葡萄品種として知られるシラーとグルナッシュにフォーカスしていた。カリフォルニアワインに期待されるパワーというよりは、どこか静けさが残る感覚があり、舌の上で見失うようなビロードのようなフィニッシュが印象的だった。
Examiner.comにて試飲したワインを紹介したことをきっかけに、光栄にもオーナー醸造家のマティアス・ピピク氏よりご連絡を頂き、テイスティングルームに招待していただくことになった。サンタバーバラのダウンタウンにあるテイスティングルームは、モダン建築にアジアのエッセンスが取り込まれ、コンパクトながらとても心地よい異空間。
ワインのバックストーリーを伺ったところ、幼い頃の家族旅行や、ミュージシャンを夢見てドイツからアメリカに移住して来た青春時代の思い出など、これまで歩んできた人生の様々なシーンを、ワインの世界に拠って、アート的に、表現しているとの由。
カジュアルさの中に知的で魅力的なオーラのあるマティアス氏の愛読書は、驚いたことに山本常朝の「葉隠」。無駄のないロジカルな生き方と、哲学的な美しい表現を、自身のワイン作りに応用しているとのこと。その例として、ワイン樽の保管室には、まさに見た目が「ふすま」のスライド式ドアを取り入れ、限られたスペースを有効活用している。また、「自然の流れ」に逆らうのではなく、今できることに集中するというコンセプトを大切にし、葡萄本来の特徴を尊重しつつ、その潜在能力を最大限引き出すことに努めている。彼の献身と研ぎ澄まされたセンスがこれらのワインに表れているのだろう。
Sanguis Wine http://www.sanguiswine.com/
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

