Alice in WINEderland
Vol. 1 Demetria Estate
2012-03-26
「ソフトなボディーのローカルワインでお勧めはありますか」と尋ねたところ、ソムリエさんが一押しですとセラーから持ってきた1本。2009年の冬、これがデミトリア・ワインとの出会い。
グラスに注がれた2006年ヴィンテージのピノ・ノワールは繊細でエレガントなフランスワインのニュアンスがあり、それが妙に新鮮で印象的だった。
今回ワイナリーを訪れたところ、オーナーのジョン・ザフダニス氏自らが迎えてくれた。ワイナリーはサンタバーバラのサンタ・イネスに位置し、ヨーロッパの田舎の教会を思わすテイスティングルームの外にはカントリー調のテーブルが並べられ、バルコニーからは葡萄畑が一望できる、うっとりするほどの美しい情景が広がる。「デミトリア」はザフダニス氏のお嬢さんの名前であり、彼のルーツであるギリシャの言葉で「収穫」を意味するとのこと。
ワイナリーを案内しながら、高品質の葡萄の選別工程だけでなく、最新の施設・機器や独自の自然派農法などを丁寧に説明してくれた。ザフダニス氏が目標とするものは「ヨーロッパの専門家も認める複雑味のある洗練された作品を完成させること、つまりカリフォルニアワインの改革」。これこそが、デミトリアワイン特有のスタイルの鍵。
ザフダニス氏が次なるステップアップに向け現在試験的に1バレルのみ作っているというワインを特別に譲ってくれた。ボトルにはピノ・ノワールとの表示の他「wabi sabi」と書かれている。ザフダニス氏は笑みを浮かべながらうなずいた。「英語では理想とする言葉が見つからなかったが、ぴったりな表現を日本語で発見したんだ」。
たくさんのこだわりストーリーと愛情が詰まったワイナリー、ますます目が離せなくなりそうだ。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

