後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第162回 スカイツリーとものづくり
2012-03-24
三年八ヵ月の工期を終えて東京スカイツリーが完成しました。
賞賛に値するのは、世界一高い電波塔(六百三十四㍍)を完成したのと、ものづくりの粋がこの鉄塔建設に反映されているからです。
その不思議さは塔の内側中央を貫く心柱が全然塔の構造にかかわっていない点。外径八㍍のコンクリート製心柱が五重塔の先端三二・五㍍まで延びているに過ぎません。
建設を担当した大林組の大林会長によると、心柱は法隆寺の五重塔と同じ原理で揺れに対して逆の動きをし、全体の揺れを抑える働きがあるそうです。
心柱は頂上の相輪を支えているだけなのに、揺れを吸収するというから不思議です。
築後一千三百年、以来、日本はマグニチュード7以上の地震を四十六回経験しています。なのに法隆寺五重塔は今も悠久の時空を超えて立ち続けています。
ヒノキ造りの五重塔がいまだに崩壊しない事実は、現代科学をもってしても容易に解明できない謎といわれています。
大林組の匠は古代人の知恵を鉄塔建設に応用、日本人のものづくりをさらに高みへ導きました。
欧米の製造行為は主として機械の産物ですが、日本のものづくりは単なる機械の産物ではありません。
たとえ機械を使うにしても、伝統、文化、こだわり、魂、心意気といった人間のぬくもりを製品に込めようとします。
製造は単なる製造にあらず、精神を込めた作品に高められるのです。
東京スカイツリーには何百万個もの絶対にゆるまない日本製「ネジ」が使われています。
ほかと違うのはボルトに締め付けるナット(ネジ)が一つではなく二つ重なっている点。
作業は二つのナットをスパナで締め付けるだけ。日本のハードロック工業(社員五十人)の小さなナットが巨大な東京スカイツリーを建て、世界の幾多の高速鉄道や高架橋を支えています。
クール・ジャパンと賞賛される日本のものづくり、その真価が改めて注目されようとしています。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

一九六四年時事通信社入社。旧通産省、旧農林省、旧大蔵省を担当後、ロサン








