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コラム

キム・ホンソンの三味一体
vol.7 君子蘭

2012-03-24

 私たちの家には小さな庭があります。この数年間の園芸のまねごとの努力も空しく、数々の花々を枯らしてしまいました。内心あきらめていた去年の秋ころ、私たちの下手な園芸を気の毒に思ってか、ある方が植木鉢を下さいました。「これは君子蘭という花で、これなら丈夫であまり手がかからないし、暖かくなったら花が咲きますよ」。君子蘭という名前を聞いたのは初めてでした。頂いた当初は分厚くて長い緑の葉っぱばかりで、花が咲きそうな気配は全くなく、果たして本当に花が咲くのだろうかと疑心暗鬼でいました。ところが先々週辺りからつぼみが出始め、今日はなんと14ものきれいなオレンジ色の花が咲きました!

 早速下さった方にご報告のメールを書こうとメールを開くと、懐かしい友人から約3年ぶりにメールが届いていました。彼女は、ニューオーリンズで働いていたときに不運にもハリケーン・カトリーナで被災して家と仕事を失い、夫婦でロサンゼルスに移住してきました。いつも明るくガンバリ屋さんでしたが、「被災したときのことを思い出すと、まだ涙がとまらない」と私たちに話してくれたことがあります。家族ぐるみで親しくしていたので、心にまだ癒えない傷を抱えていたことが気がかりで何かサポートができたらと思っていました。
 そして4年ほど前、彼女はご主人の仕事の関係で、南太平洋のある途上国に移住しました。ご主人の仕事とはいえ、生まれたばかりの赤ちゃんと全く馴染みのない所に引っ越すと聞いて、正直「大丈夫かな」と心配でした。最初の1年間はメールのやりとりもありましたが、「不運にもまたも不可抗力なトラブルに見舞われて、日本に帰らざるを得なくなった」というメールを最後に、全く連絡が取れませんでした。

 久しぶりの彼女のメールから、日本での充実した幸せな日々の様子が伝わってきました。「最初は大変だったがとても良い仕事と新居にも巡り会えて今は3人でとても幸せに暮らしています」というメッセージには、3人の輝かしい笑顔の家族写真が添付されていました。それを見て、あの君子蘭を思い出しました。
 長い冬を耐え抜いて、ついに咲いたあの鮮烈なオレンジ色の花は、まさに彼女のことだ思います。雨の日も風の日も希望を失わずに耐え抜いたからこそ、あんな笑顔になれたのだなと。庭先の君子蘭を眺めていると、20ヶ月の娘も咲いた花を見ながら手の平を開いて、「オープウン」と習いたての言葉を披露しました。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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キム・ホンソン

牧師、コラムニスト、元ソーシャルワーカー、日本人の奥さんと3人の子供達に励まされ頑張る父親。韓国ソウル生まれ。中学2年生の時に宣教師であった両親と共に来日。関西学院大学神学部卒業後、兵役のため帰国。その後、ケンタッキー州立大学の大学院に留学し、1999年からロサンゼルスのリトル東京サービスセンターでソーシャルワーカーとして働く。現在、性的マイノリティーをはじめすべての違いを持つ人々のための教会、聖霊の実ルーテル教会 (Torrance) と復活ルーテル教会日本語ミニストリー(OC, Huntington Beach)を兼牧中。

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