キム・ホンソンの三味一体
vol.6 成長の糧
2012-03-24
19ヶ月になった娘が、最近やたらと目をこすっていることに気づきました。その頻度といい激しさが増してきたのでかかりつけの小児科医に見せることにしました。そして血液検査の結果、なんと猫アレルギーだということが判明しました。
娘を預かってもらっているホームデイケアでは猫を2匹飼っていたので、急遽デイケアを替えることになりました。新しい所は以前の少人数のアットホームな感じとはうってかわって、16人もの園児がいる大きなセンターです。家内と私が初めて娘を預けた朝、自分一人残して去って行く私たちを見ながら、娘は小さな身体を震わせながらありったけの力で泣きました。そんな娘を見て、まるで胸が押しつぶされるような心境でした。迎えに行ったその午後もまた、遠くから私を見つけた娘は、恨めしそうな嬉しそうな複雑な表情で泣きながら胸に飛び込んでくるのです。
娘の健康のため断腸の思いで決行した「涙の送り迎え」を一週間続けて、やっと慣れて来た気配がし始めたその週末、娘は生まれて初めての高熱を出し、その後1週間、デイケアをお休みしなければなりませんでした。私たちからすれば、やっと慣れてきたのにすべてが振り出しに戻るような感覚でした。しかし、風邪が治ってからデイケアに戻った娘になんだか一皮剥けたような大きな変化がありました。
「涙の送り迎え」から徐々に涙が消えていくにつれて、デイケアのたくさんの子どもたちと遊ぶためか、以前よりうんと食欲が増し、夜もぐっすり眠るようになりました。何だか社会性も身に付いたようで一段と成長したことを実感しました。今考えると、娘にとってその時は“つらい”としか思えなかったことが、実は後の成長に欠かせない肥料となっていったのだと思います。
そう考えると私たち大人の世界においても、同じことが言えるような気がします。何かを失ったことがかえってもっと大事なものを得るきっかけになったり、困った時にこそ真の理解者や支持者を得ることができたりするのではないでしょうか。試練や困難の中にこそ成長のための糧が秘められているんだね、と夕食時のおしゃべりを楽しんでいる時、急に娘が耳をこすり始めました。「ひょっとして中耳炎?」またも新たな成長のきっかけの始まりです!
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

牧師、コラムニスト、元ソーシャルワーカー、日本人の奥さんと3人の子供達に励まされ頑張る父親。韓国ソウル生まれ。中学2年生の時に宣教師であった両親と共に来日。関西学院大学神学部卒業後、兵役のため帰国。その後、ケンタッキー州立大学の大学院に留学し、1999年からロサンゼルスのリトル東京サービスセンターでソーシャルワーカーとして働く。現在、性的マイノリティーをはじめすべての違いを持つ人々のための教会、聖霊の実ルーテル教会 (Torrance) と復活ルーテル教会日本語ミニストリー(OC, Huntington Beach)を兼牧中。








