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コラム

編集部
ハーバード・ビジネススクール HBSAOC 招待で日本人初の講演

2015-08-21


 アメリカの名門大学の一つハーバード・ビジネススクールの卒業生で構成されているHBSアソシエーション・オブ・オレンジ・カウンティ(HBSAOC)は、東洋ゴム工業株式会社の北米タイヤ事業統括会社Toyo Tire Holdings of Americas Inc.社長の水谷友重氏=写真右=をゲストスピーカーに招き、7月23日、UCI内のクラブハウスにてハーバード・リーダーシップ・シリーズの講演を開催した。参加したのはHBSAOCメンバーのビジネスコンサルタントや投資会社・各種会社の経営者たち約100人で、シリーズ初の日本人スピーカーの語る経営哲学や経営戦略に真剣に耳を傾けた。
 
 水谷氏は、これまでもUCLA、ペッパーダイン大学、UCI大学院、チャップマン大学の経営学大学院などから特別講師として招かれて講演を行った経験があり、多くのビジネススクールの学生たちにやる気と感動を与えてきた。今回の講演の前半で水谷氏は、90年代初頭にアメリカ市場で無名で経営難にあえいでいたブランドが、日本本社とは全く違う展開をすることで、幾多の困難を乗り越え、大リーグ球場に広告を出せるまでに至る道のりをユーモアを交えながら語った。
 「タイヤを交換するのを誰が喜ぶでしょうか?タイヤは、水道、ガス、ガソリンと同じ生活用品です。『生活に必要だからタイヤを購入しなければならない…』という考え方を、『 Nitto タイヤが欲しいんだ!』に、“仕方なく買う消耗品”から“欲しいブランド”へと、顧客のイメージを変革しました。この販売戦略の大転換は、ローマ帝国のジュリアス・シーザーが『ルビコン川を渡った』みたいなもの」と水谷氏は語った。
 Nitto Tire には消費者よりファンがいるといっても過言ではない。"恐竜の骨や爪"をデザインした「Mud Grappler」はオフロード界で大変な人気を誇る。ある熱烈なファンはタイヤのデザインを模した結婚指輪を特注したほどで、Nittoはアメリカのファンの心を捉えることに成功した。
 しかし、欧州車向けの販売では伸び悩んだ。その原因が販売店にあると判明すると、すぐにフェラーリやランボルギーニなどの愛好家ブログの人気ブロガーたちにアプローチ。影響力のあるブロガーたちにタイヤをサンプル提供し試用してもらった。するとNittoブランドを気に入ったブロガーたちが次々に発信し始め、欧州車向け需要は一気に高まった。当初、Nittoの販売に消極的だった販売店も「Nittoタイヤを欲しい!」という消費者の要望を聞き入れ始めた。
 水谷氏は「いかにお客様に喜んでもらえるか、いかに車の愛好家たちのハートつかむかを考え続けてきたことが、現在の私たちを作っています」と語った。
 講演の後半、MCのランス・スチュアート氏との対談で、水谷氏は、なぜ自身がアメリカ市場への理解を深めることができたかを語った。日本の平均的な家庭に生まれ育った水谷氏は、二人の人物から薫陶を受けたという。一人はアメリカで経済学博士号を取得した神戸大学時代の恩師・天野教授。もう一人は日商岩井勤務時代の上司・中島氏だ。特に中島氏はまだ20代だった水谷氏を世界30カ国以上に単身で派遣し、ビジネス展開を任せた。そしてNitto Tire再建のため水谷氏をアメリカへ送り込んだ。
 「30の国には、30の正義、30の習慣、30の見方があることを身を持って体験しました。心をオープンにし、相手の理解に努め、柔軟でなければなりません。異文化から来たからこそ、その国の考え方の根っこをありのまま理解しようと一生懸命努めました」。
 水谷氏は自身の“成功の鍵”は3つと振り返った。①情熱、それが人を動かしたこと、②理解し支えてくれる上司を持てたこと、③上司からの支えを得続けるために結果を出せたこと。
 また日本企業は女性に閉鎖的だと一般的に言われる中で、Nitto Tireには女性管理職が多く、水谷氏の後任にケイコ・ブロッケル氏を起用した。アメリカでも業界初の女性社長が誕生したことについて、「これはきちっと能力と業績に基づき人事を決めてきた証」と話した。パフォーマンスを純然と重視したら、結果として女性の採用・昇進が増えたという。
 変革へのリスクやタブーを恐れず挑戦し続ける水谷氏の経営哲学に、参加者たちは感銘を受け、大きな拍手を贈った。

HBSAOC理事でMCを務めたランス・スチュアート氏(左)との対談後は、参加者からの質疑応答が続いた

水谷氏の講演を聞くHBSAOCメンバーたち


=T. Kanemaru


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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