NikkanSAN_TopBanner_2023-05-07

ロサンゼルスの求人、クラシファイド、地元情報など

日刊サンはロサンゼルスの日本語新聞です。 記事は毎日更新、求人、クラシファイドは毎週木曜5時更新。

第2回年間賞 ポエム・タウン

祝辞 在ロサンゼルス日本国総領事 新美 潤


この度の「ポエム・タウン」第2回年間賞を受賞された皆様、誠におめでとうございます。
昨年に引き続き、詩、俳句、川柳の各部門において、多数の優れた応募作品から、技巧的な優秀さ、また作者の思考や感情を表わす的確な表現力を備え、美しく豊かな日本語の特徴を生かした素晴らしい作品が今年も選出されました。

「ポエム・タウン」の開設目的は、日本語表現による純粋で素直な感性の育成、さらに美しい日本語ひいては日本文化の普及・推進であると伺っています。回を重ねるごとに応募作品が増え、内容も高度な文学性を含む作品が目立つようになってきており、選者を務められる先生方の御苦労が伺えます。年間を通して発表される作品群は、どの作品も作者の才能を忌憚なく発揮しており、見事に「ポエム・タウン」の開設目的を叶えるものとなっています。

作者の皆様は、創作活動を通じて、積極的に交流をはかり、「文学の輪」を広げておられると伺いました。「ポエム・タウン」 への作品投稿が契機となり、国籍や母語の違いを乗り越え、日本語や日本文学の愛好家達の新たな文化交流が芽生えていることを心から歓迎致します。
「ポエム・タウン」第2回年間賞受賞者の皆様におかれましては、益々創作に励まれ、読み手の心に響く魅力的な作品を生み出していかれることを御期待申し上げます。 また、これまで「ポエム・タウン」に応募された皆様も、引き続き作品づくりに励まれることを願っております。

「ポエム・タウン」の運営に、御尽力されておられる日刊サンの関係者の皆様、作品の選考にあたられる先生方に改めて敬意を表しますとともに、「ポエム・タウン」の益々の御成功を祈念申し上げます。

  • <川柳> 受賞作品
  • <短歌> 受賞作品
  • <詩 青少年の部 最優秀年間賞>


    ありがとう  柳沢 詩


    かわさきせんせい ありがとう うたより
    ママ ありがとう うたより
    ふみいせんせい ありがとう うたより
    うさぎさん ありがとう うたより
    ○○○○ ありがとう うたより
    \\\\ありがとう うたより
    よんく ありがとう うたより
    おはな ありがとう うたより
    いすめめ ありがとう うたより

    <詩 成人の部 最優秀年間賞>


    乱視  内 アリス


    山は削られ
    むき出しの肌が
    まともに夕陽をあび
    平行線の検査表も
    遠くで交わって見える
    乱視の描き出す
    不条理の交叉
    いつもこの目で見て
    たしかめ
    信じていたものが音をたてて
    崩れ落ちてゆく

    あぶないと
    叫んでも
    誰の耳にも届かない
    誰の目にも
    削られた山肌は
    緑を失くして
    そそり立っている

    知ってしまった痛みに
    誰も気づかなくとも
    胃の痙攣が続き
    突然の目眩に
    しゃがみこむ

    いつものとおり
    空は広く
    かかえこんだものの重さも
    受け入れて
    陽が沈む

    <詩 青少年の部 ぺんてる賞>


    なぜ  白形小菊


    なぜなの
    なぜ私は産まれ、手と足が動くの
    なぜ君と出会ったの
    なぜ黒は黒っていうの
    なぜなの?なぜ、なぜ、この世界はなぜで囲まれているの

    無限大  安丸芽生


    悲しい事があったとしても、
    下を向かず上を向う
    私たちの上には無限大の空がある
    そんな空を見ればなにもかもふっとび、
    傷付いた心の気持ちが空のかなたに消えていく
    空はそれだけの広さ、無限大の広さがあるのだ
    空に少しだけ甘えよう
    無限大の心の広さがあなたを支えてくれる

    かまどのごはん  島田 櫂


    けむい
    けむい
    けむたい
    かまどのごはん

    目がいたい
    いたい
    くさい
    くさいよ
    黒いけむり
    とにかく全ぜん
    見えない

    ぷちぷちおどる
    食べてみたら
    おいしい
    おかまの中のごはん
    はじめてたべるいなかのごはん

    かまどの外は
    黒い体
    でも中身は
    まっ白
    しあわせごはん
    星のように光るつぶつぶ
    はじめて食べる鹿児島の
    かまどのごはん

    <詩 成人の部 ぺんてる賞>


    ひとり  宝井 景


    背負うものがあるから耐えられる
    小さな幸せすら踏みにじって進む
    「幸せか?」と聞けれたら迷わずそうだと頷く。

    信じて。信じているから

    鳩尾抉られる様な背筋が凍る時間
    ひとりきりじゃないよる
    会えなかった日
    記憶がない朝方
    動ごかずにじっ、と様子を伺う
    弾ける、バラバラになる

    的を得ぬ答え
    捻り出した言い訳
    苦し紛れの嘘
    昨日に身を焦がす

    「滑稽だね」と、誰か嘲笑えば良い

    もし少しでも私を思い出すことがあるなら、本当に報われる

    この先に何がある
    私の望みは何時叶う

    此処で終われるなら
    誰の記憶にも残さないで

    それから、あの人たちがどうかしあわせで在ってと
    そう願うのに

    紙ひこうき  みちこ


    きもちが泳ぐ
    風邪のせいだろうか

    ぼんやり本を開けた

    そこに
    紙ひこうきがあった
    いかひこうき
    やりひこうき
    へそひこうき
    何かが白く光る

    原っぱが見え
    風が走り
    息子の声が聞こえる

    一枚一枚折ってみる
    歓声をむねに聞き
    足は草原を蹴り
    飛んでいた

    閉じる  宇都湖畔


    読みかけの本を閉じるように
    無雑作に
    七十五年の生涯を
    自ら閉じた
    あなたの強さを思う

    時代にも
    世間にも
    抗議せず
    過酷な自然の中で
    一途に土を愛し
    黙々と働き
    頭を垂れた稲穂の中に
    こぼれる笑顔のあなたを見た
    あの日のあなたを忘れない

    春はもう
    そこ迄来てたのに

    <詩 青少年の部 佳作>


    お正月  歓喜ジョイ


    お年玉をもらえる
    おもちが食べられる
    私はあべかわもちが好き
    いとこと遊べる
    リトル東京のイベントに参加した
    たいこをたたく
    おもちをつく
    お父さんとお母さんは ね正月
    おもちのように やわらかく 休んでいる
    おもちのように ふっくら はなちょうちんを出している

    はる  中山泰造


    はるはあたたかい
    たいようの光が差し込みすずめがないています。
    子どもたちがキャッキャッとあそび草花はおいしげっています。
    ぼくの心ははれやる気がでてきました。
    これからもがんばろうと!

    さかな  松本トラビス


    さかなはいろんなしゅるいがいます。
    ながいさかながいます。
    さかなはいろんな川とかうみにいます。
    さかなはとべるさかなもいます。
    ぼくはさかながすきです。

    チョコレート  白形千代


    チョコレートはあまい。
    チョコレートはいっぱい種類がある。
    チョコレートランドがほしい。

    私の友達そして春  松井あかね


    また明日と言ってたあの頃はいつだろう。
    毎日が楽しくて
    明日になっても君がいると思って
    ずっとこのままかと思って
    それは大きな勘違いだった。

    この大空へ
    話しかけるよ
    ずっとこのままがいいな。

    春の光が
    私を包んでくれる
    いやしてくれるかのように
    やさしい風
    小さく揺られたい
    輝いてる瞳
    あなたのその笑顔に飲みこまれそう
    やさしい風
    私も笑った
    少し進んだ私の未来

    ミックスジュース  東 琴音


    桜がまっている
    もうすぐ入学
    でも私の心の中は
    ミックスジュースのようだ

    うれしいけどさみしい
    ゆかいだけど不ゆかい

    反対な気持ちが
    ごちゃまぜになって
    心のミックスジュースの
    出来上がり

    新しい一日  マーティン・メンディオーラ


    おなかがすいてる時、 心がいたかったら、
    ひとりじゃない。
    あなたと いっしょに、おなかがぺこぺこだ。
    食べてる時、 おいしくあじわったら、
    ひとりじゃない。
    あなたと いっしょに、しょくじをする。

    うれしい時、 ニコニコしたら、
    ひとりじゃない。
    あなたと いっしょに、わらう。

    かなしい時、 ふるえたら、
    ひとりじゃない。
    あなたと いっしょに、なく。

    寝てる時、 くたくたにつかれていたら
    ひとりじゃない。
    あなたと いっしょに、ゆめをみる。

    目覚める時、日の出を見たら、
    ひとりじゃない。
    あなたと いっしょに、新しい一日を始めよう。

    希望の光  カイル・メーズ


    暗闇の中で
    私たちは再構築されます
    暗闇の中で
    私たちは強さを見つけます
    暗闇の中で
    私たちは希望を失うことはありません
    それが再び光になるまで。

    言葉  江口将平


    僕が弱そうにみえたのか
    ある言葉に
    傷つけられ

    僕がかわいそうと思ったのか
    ある言葉に
    助けられ

    言葉は
    人を苦しめ
    人に勇気を与える

    言葉に
    助けられて
    感謝した
    人を助けたい
    言葉を大切にする大人になりたい

    夢  吉海 開


    ぼくは平等が好き
    人を守ることが好き
    かっこいい仕事をしたい
    できればお金も手に入れたい
    ぼくはしゃべることが好き
    いろいろ調べることが好き
    正義感も強いほう
    法ていに立つ仕事をしたい

    ぼくは戦うことが好き
    悪と戦うことが好き
    だれかの役に立つことをしたい
    だからぼくは弁護士になりたい

    人を裁く裁判官ではなく
    人を守る弁護士になりたい

    お掃除  白形愛一朗


    ゴシゴシゴシ
    お母さんはいつも愛情いっぱいで掃除してくれる。
    ゴシゴシゴシ
    ぼくのお母さんが綺麗にするのを見るだけで心が綺麗になる。

    <詩 成人の部 佳作>


    後遺症  古田和子


    [手を貸して]と夫が呼んでいる
    「ポッサムが住んだり洗い熊が住んだり
    パティオの奥の隅っこが
    汚れているからきれいにしよう」

    その声で突然戻って来たのは
    数年前までの私たちの生活
    「手を貸せ」と呼ばれる度に協力した
    印刷仕事に明け暮れた毎日

    夜中になるまで緊張の立ち仕事
    印刷機の機嫌を損ねないか
    どこかにミスが忍び込んでいないか
    ラジオもかき消す機械の騒音

    したい事も考えたい事もあきらめて
    えいっと自分を抑えたあのつらさが
    「手を貸して」と言われたとたん
    三十年分さあっと戻って来て私を呑んだ

    後遺症は意外に深く重かった
    単なる庭の掃除なのに
    庭の掃除は嫌いじゃないのに
    私はとうとう手伝わないで

    この頃とても優しくなった夫が
    一人で丁寧に掃除をしている姿を
    ただ窓から見ていた

    この人に今は甘えてもいいと
    なぜかそう思いながら見ていた

    私は誰  平田ミチ


    仮面をつけ道化師の様に

    おどけている私は誰。

    仮面を引きちぎり己の化身に

    おののく私は誰。
    仮面をたたきつけ孤独の刃に

    傷つく私は誰。

    仮面を抱きしめ我子のぬくもりに

    涙する私は誰。

    今、私は闇の中

    誰も何も見えはしない。

    おどける私もおののく私も

    今、私は闇の中

    私も何も見えはしない。

    傷つく私も涙する私も

    そして仮面さえも。

    風の表情  若林道枝


    急に風はでてくる
    耳を澄ませても
    窓にしがみついて見張っていても
    風が生まれる瞬間は
    捉えたことがない

    風の口は捉えられないが
    風の出口も捉えられない
    窓がむせび泣くように
    夜中に始まった喘息のように
    いつの間にかそこにいる
    また急に木々は揺れるのを止め
    花は復讐を遂げた戦士のように
    立つ

    何かを探しにくるんだよと
    おまえはいった
    あんなにどこへでも入り込んで
    何かを探しているんだよ
    そうかねえ
    ほら 私たちが真っ白な壁に残してきた
    へのへのもへの

    記憶のかなたにある
    なんの意味もない落書きを
    年老いた風は探しにきたんだよ

    伸びすぎたジャスミンの枝のように
    なんの意味もない
    つるニハののムし
    塀に忘れられ

    オデッタ  石井志をん


    里には杏が咲き、山には清流が泡を噛む
    海からも近い桃源郷に私は棲む

    ひさしぶりに街に出かけた

    シティガールにならって
    信号をさっそうと渡りきる筈が
    一段ふみはずして派手に転んだ

    息も出ないほど痛くて
    起き上がるのは暫く無理
    あわてて何かを拾うふりも出来ない

    地面についた私の手の脇を女物の靴が通り過ぎる

    ヴェトナムやカンボジアから来た人の目は
    残酷を多く見すぎたので
    空洞になっているのだろうか

    中国人は日本人の小さな事故を
    ざまーみろと思うのだろうか

    「だいじょうぶですか?」
    心配そうに私を見るのは
    オデッタみたいに素敵な声の人

    アメリカで育った人は
    礼儀正しくやさしい
    虐げられた歴史を持つというのに
    黒人の女性は
    この日のアジアの女よりずっとやさしい

    月のひかりが恋しくて  西岡徳江


    老犬の折れた片耳ピクと立ち
    夜のしじまを突き破る
    今宵ケモノとなって吠える犬
    おまえは何を聴いたのか

    しっとりと月のひかりがふってくる
    音もなく三つの固体に注いでる
    父さんに
    母さんに
    そして
    わたし 子鹿に

    あまやかなチューリップの香りに誘われて
    ツンツンと伸びる木の芽が呼ぶからに
    ふわふわと漂う風が触れるから
    人間が眠りについた夜を出る

    しっとりと月のひかりがふってくる
    こんな夜の
    月のひかりが恋しくて
    月のひかりが恋しくて

    息子  マキ・ヨシダ


    こんなにも深く美しい色を魅せつける海
    ゆっくりと飲み込まれていく、やわらかな太陽

    思わずエンジンを切る

    隣に座る息子は、言葉なき子

    何をもって、君はその感動をあらわすのだ?

    彼の顔に、きらきらとした青とオレンジの色彩が吸い込まれていく
    小さな小さな色の妖精が彼のところだけに訪れる
    それはとてつもない速さで

    もう十分だよ

    そこには、誰よりも私が愛する笑顔があった

    ニューヨークの夜  シマダ マサコ


    零下の深夜

    クライスラー
    ビルディングのタワーの明かりは
    闇に冷たくひかり

    眠れぬ旅人のこころを癒す
    午前二時

    ひかり輝く貝殻を
    積み重ねたとんがり帽子の屋根の
    背後から

    見よ

    半月が浮かびあがる

    そんな筈はない
    疲れた瞳のいたずらか

    幻影であればあれ

    記憶せよ
    記憶せよ眼球の底に
    この華麗さを

    午前六時薄れゆく闇
    タワーの明かりは音もなく消え

    四十九階の部屋から見下ろす地上に
    今日が始まる

    昨日のように
    明日のようにふたたび

     足跡・・・存在とは?  平 凡人


    フッと振り返ると 足跡が 5―6歩

    私について来る

    素足でそぞろあるきの 砂の浜を

    紛れなく あれは  “過去”

    見ている私は    “現在”

    踏み出す一歩は  “未来”

    不思議だ!!

    見える筈の無い“過去”が現存している
    そして跡を記しえぬ“未来”までも
    “現在”の私と共に、今、この浜辺に

    この世とは

    見ている過去は現在で
    現在の私は過去と成りつつ
    既に未来と言う存在なのだろうか

    答えが欲しい !!!

    私は

    逝きし者か  今ある者か
    それとも真近き者なのか

    心の住処  石口 玲


    アメリカに住めば住むほど
    アメリカを好きになります

    日本を離れれば離れるほど
    日本をいとおしく
    日本を愛している自分を感じます

    日本とアメリカ

    この間に挟まり

    【心の住処(すみか)】は何処なのか

    私の心は、

    今も揺れています

    人生は思っているより短い  山下さち


    夜の九時三十分
    車はライトをつけて
    右へ、左へ
    それぞれ 走る、走る
    十時、
    まだ 進む
    どこへ行くの
    右へ、左へ
    人間の最後は死。
    わかっているの?
    確信があって
    今を生きているの?

    有難う  井上三重


    うまいもの、作ってくれて
    ありがとう
    つらいとき、話してくれて
    ありがとう
    忘れ物、届けてくれて
    ありがとう
    雨が降り、庭の芝生も
    ありがとう
    素直にいおう、
    言葉に出して、
    有気を出して、
    今すぐいおう、明日といわずに。
    愛をこめた言葉は人の心を温める。


    <俳句 成人の部>


    最優秀年間賞    山茶花や妻にいまだに紀州弁    鈴木ロジー

    最優秀日刊サン賞   真白なる初富士胸に羅府に住む   野島弘子

    最優秀TJSラジオ賞  乙女らの含み笑いや桜餅   古賀由美子

    ゲスト選者優秀賞  沈む日の涯に母あり彼岸花   生地公男

    四季彩賞(最優秀賞を逸した作品の中から特に優れた作品に授与)
    ぼんぼりにゆらぐいにしへ雛の宵    金子ミツ江

    秀逸      異土の梅仰ぎ傘寿の背に力     塚本 惠

    秀逸      リンと立つ父の背中やアユ解禁   榊原フジ江



    <俳句 青少年の部>


    最優秀年間賞    春が来て私の前で桜咲く    サウストーレンスハイスクール いまの さえ 15歳

    最優秀日刊サン賞   なつが来た日本に行くよ楽しみだ   こどもの家 林 秀 10歳

    最優秀TJSラジオ賞  春が来るリスが走って花が咲く   ソーテル日本学院上級 キンテロきせき 13歳

    ゲスト選者優秀賞  水鉄砲飛び散りたるは笑い声   サンマリノ高校 田中 澪  16歳

    四季彩賞(最優秀賞を逸した作品の中から特に優れた作品に授与)
    風が吹く色いっぱいに落ち葉舞う    ダップルグレイ小学校 白形小菊 10歳

    秀逸      豆まきでまどを開けたら星きらり     優塾 山崎光夏 小学5年

    秀逸      ちょうちょうです静かにしてね昼寝中   こどもの家 テイラー・キアナ  12歳



    <川柳>


    最優秀年間賞    亡き夫(ひと)のメモ書き今は宝物    石口 玲

    最優秀日刊サン賞   久方に会えばハグする癖になり   石口 玲

    最優秀TJSラジオ賞  冷や飯を寒い御飯と言う五世   詩月直竹

    ゲスト選者優秀賞  山頭火まねても旅にスマホ連れ   本 めぐみ

    水鏡賞(最優秀賞を逸した作品の中から特に優れた作品に授与)
    市民権そんなの無いが買う花火   永沢 卓

    秀逸      半世紀RとLは未だ云へぬ     フミコ・ロペス

    秀逸      八十路坂片道キツプの旅近し   高峰みち子



    年間賞の選を終えて

    どれもこれもが秀作ばかりで、選考に苦慮しました。【青少年の部】の「最優秀賞」に輝いたのは、『ありがとう』柳沢 詩さん。若干4歳にして、自由で快活な表現力を評価しました。
    本年度の「ぺんてる賞」は『無限大』安丸芽生さん。『なぜ』白形小菊さん。『かまどのごはん』島田 櫂さん。例年のように、一人だけ選ぼうとしましたが結論が出ませんでした。それぞれの詩が、見事に個性を開花させていました。
    「佳作」は11人。『ミックスジュース』東 琴音さん。『希望の光』カイル・メーズさん。二人の作品が特に心に残りました。
    【成人の部】は、内 アリスさんの『乱視』が「最優秀賞」に選ばれました。躍動感と感情移入が評価されました。
    「ぺんてる賞」には、青少年の部と同じく3人が選出されました。『紙ひこうき』みちこさん。『閉じる』宇都湖畔さん。『私は誰』平田ミチさん。
    「佳作」には、「ぺんてる賞」の候補が数名いたのですが、3人が限界ということで断念いたしました。
    このように本年度は、質の高い作品がしのぎを削りました。選者泣かせと同時に嬉しい悲鳴です。年を追うごとに良作が寄せられています。来年度は『LA詩壇』をもっと盛り上げていきたいと思いました。
    (新井雅之)


    俳句

    昨年同様、まずは今年投句いただいた方々にお礼を申し上げたい。投句がなければ成り立たない欄である。そして、この欄をご覧いただいている読者のみなさんの支援も欠かせない。毎回拙い選をさせていただいているが、読者の中には、私より句歴の長い人もおられる。諸先輩の目が光っているのは常に感じているが、そういう見方もあるのか、と見ていただければ幸いである。

    この夏、私は「ハイク・ノースアメリカ」という団体がロングビーチのクイーンメリー号を会場に催したワークショップに参加する機会があった。ハイクが米国で市民権を得て、大勢のハイジンが熱心にハイクについて語り合っているのを目の当たりにして、日本人として嬉しかった一方、これはうかうかしてはいられないという思いを抱いたものだった。 今年年間賞を受賞したそれぞれの作品についての選評は、すでにそれぞれ本欄で述べてきているのであえて繰り返さないが、年間最優秀賞の作品に関連して、思い出したことがある。以前、今年で創立91年になる「橘吟社」の初句会にお邪魔した際、ある会員が「どこを見て詠んでいるのか分からないような句は作りたくない」と話していたことだ。以来、心したいと思い続けている。

    「歳時記は日本人の感覚のインデックス」(寺田寅彦)。来年も歳時記を睨みながら、季題を詠っていきたいと思っている。(嶋幸佑)

    「真白なる―」。初富士といえば新年の象徴。毎年、毎年お正月にこのような思いを抱いている人はたくさんいるのではないでしょうか。故郷の国を思いながら海外で頑張っている人がたくさんいます。そういう人たちにとって新年は特に日本らしいものが懐かしく思える時。実際には見れないけど心で富士を描きながら今年もここで頑張ろうと心新たにするたくさんの羅府で暮らしている人たちの顔が思い浮かぶような一句です。

    「なつが来た―」。誰かが 夏休みなどに 日本に行くと言うと思わず 「楽しみだねえ !」と声をかけてしまう。アメリカで暮らしていて大人も子供も日本に遊びに行くのはとても楽しみな気分になる。心から溢れるそういう気持ちを真っ直ぐに感じることができるとても素直な俳句です。作者だけでなくこの句のような気持ちになる人はこの地にたくさんいるでしょう。(日刊サン)

    「乙女らの―」。やはり、この句の可愛らしさが大好きです。どんなに年を重ねても、食い気と茶目っ気のあるそんな乙女が春色の空の下で微笑む光景が目に浮かぶようです。果たして何歳の乙女でしょうか?いつまでも可愛い乙女で居続けたいものです。

    「春が来る―」。軽やかなリズムが流れる一句。春が来るという最初の5文字の期待感に加え、イメージの中で、リスのふさふさしっぽが春の心地よい柔らかな空気を運んできてくれますね。リスが走った後に咲く色とりどりの花に想いを馳せながら、この寒い冬を乗り切りましょう。(TJSラジオ)

    今年の俳句部門には、ゲスト選者としてロサンゼルスの日系コミュニティーより6人の方々がご協力くださいました。そして、ゲスト選者選に選ばれた成人・青少年の部の中より、日刊サン編集者が「優秀ゲスト選者選」を一句ずつ選びました。成人は、「沈む日の―」。心の情景が浮かぶような一句でした。青少年の「水鉄砲―」も、笑い声が聞こえてきそうな元気の良い一句でした。(日刊サン編集者)


    川柳

    年間賞を選ぶ仕事は重くきつかった。優れた句が軒並みで最終選考を成すためには好いなと思う作を次々と落とさねばならない作業だった。だから最終に残らなかった作者の方々も自分のは優れていたと誇りを持ってください。読者の皆さんも味わい楽しみ感動を得たと思います。

    石口さんの「亡き夫―」は生活のふとしたひとコマの行外に静かに広がる温かいいとしさ、懐かしさ、切なさの情感が味わい深い。川柳は生活の歌、あらゆる形や題材が有ってよいがこういうよい対象を掴むと深い人生の歌になりますね。同じ境遇でなくても共感する人が多いことでしょう。

    永沢さんの「市民権―」、日本人新一世の一筋縄ではいかない心情をよく五七五に入れ込みましたね。独立記念日といっても本当の自分の生国ではないし、無邪気にはしゃぐ気持ちにはならないが周りは国を挙げて華やかに祝う日だし、花火は好きだしまあ一緒にやるか。他国からの移民が米国を良い国と素直に憧れて来て嬉しく祝う人も多いのと比べ、そう単純にはなれない日本人ならこの心の襞がよく分かる。「そんなの」がよい。「花火買う」の方がよりユーモアが。

    フミコさんの「半世紀―」、日本人の弱い所ですなー。最早日本人の誇る?IDとすらなった? Rice/Lice, Right/Light, Ray/Lei, Ruck/Luck, Rust/Lust,,,色々ありますね。間違えてとんでもないことになったり、愛嬌になったり、日本人の悲哀を自慢じゃないがと素直に面白く歌いました。RとLが云えるなんて日本人じゃない、なんて居直ったりして。こうなったら半世紀と云わず三つ子の魂百までと行きますか、いやいや努力しましょう。

    高峰さんの「八十路坂―」、昔は人生50年、今は80、90年、でも人に皆必ず訪れる旅立ち。これを静かに落ち着いた自覚と心境が伺える川柳にさらっと謳うのは仲々のこと。過ぎた過去を振り返り名残惜しさも感じながら穏やかに「旅」を謳う作句力。そんなことおっしゃらず「九十路坂」への切符に切り変えて下さい。高峰さんの「初日の出―」の句も素敵でした。

    最後に今年一年沢山の応募作を送って下さった皆さんに心からお礼を申し上げます。投稿は女性の方が多い。女性の方が表現欲、創作欲、詩ごころが旺盛なのだろうか。いやいや男女同権、同能の筈だから?是非男性の歌人も奮起を。人生は一度、今日も一度だけ。来年も大いに創り謳い楽しみましょう。読者との対話も。(半田俊夫)

    長くアメリカに住んでいるといつの間にかどこか無意識に自然とアメリカナイズされている部分が誰しもあるように思います。そして、日本に住んでいる友人などに会ったときについしたことでちょっと驚かれることも。同じアメリカ生活をする者として「あー。これ!私もそうかもー。あるある!」と心の中でつぶやき思わずクスっと微笑んでしまう楽しい川柳でした。(日刊サン)

    まさに17音で綴るアメリカ日系社会。寒い御飯だったら、居候も肩身が狭いだけでなく、風邪をひかないように気をつけなければいけませんね。時代と共に日本語もその使われ方が変化していきますが、風土や歴史が大きく影響している事を改めて感じ、尚かつユニークな一句でした。(TJSラジオ)

    第8回から選者陣らが揃った川柳部門。第4回から第7回までの日刊サン選ベスト10と各選者選をそれぞれ合わせた応募作品より各賞を選考しました。「優秀ゲスト選者賞」には「山頭火―」を選びました。放浪の俳人の山頭火をまねてはみたものの、やはり現在人の必需品は欠かせない…という現代人の悲しいサガが見えたところが、情けないやら…。共感できる一句でした。(日刊サン編集者)


    短歌選者 歌人・岩見純子と歌人・西岡徳江が語る「短歌の魅力」

    短歌選者 岩見純子 作 三首
    私にとっての短歌の魅力は、あの魔法のような定型リズムです。五、七、五、七、七のリズムに日々の出来事や思い (喜怒哀楽)を言葉にして託し、出来上がった短歌は、佳くても満足できないものでも、自分の生活の記録になり、後で読んでも愛着があるものです。

    医者の目は吾の乳房を見据えつつ癌細胞が潜むと告ぐる
    乳癌の宣告を受けた時の歌。あの日から12年が過ぎました。

    合歓の木にピンクの細き絹糸を束ねし如き花が咲きたり
    私の家の真向いの庭に大きな合歓の木があり、毎年、初夏になると絹糸のような花を咲かせます。

    不審なる顔して吾を見つめいる母は自分の子さえ忘れて
    最近の歌。認知症の母は自分の娘の私がだれかも覚えていません。

    短歌選者 西岡徳江 作 三首
    良い歌をたくさん読んで、たくさん作っていくと、歌の良し悪しが見えてきます。あきらめずに挑戦してみましょう。

    河沿いの蜆の貝を踏みゆけば足にやさしきアジアの響き
    メリーランド州に住んでいた15年前の作品です。ポトマックの河辺を歩いた時、蜆の貝殻を見つけ、はるかなアジアに思いを寄せました。私の机の前に掛けてあります。

    焼け跡に半旗を掲げ夜も昼も埋もれし希望を人は掘りゆく
    9・11の同時テロ事件の歌です。消防士たちが、崩壊したツインタワーの瓦礫の中から生存者を捜していたシーンが目に焼きつきました。「朝日歌壇」と「天声人語」に掲載されました。

    芝原に座して花火を待ちいれば川の匂いとなりゆく君は
    6年前の4th of Julyで、ミシシッピ河に打ち上げられる花火を待つ歌です。「あなたを想う歌」の優秀賞でした。



    最新のクラシファイド 定期購読
    JFC International Inc Cosmos Grace 新撰組6月B Parexel pspinc ロサンゼルスのWEB制作(デザイン/開発/SEO)はSOTO-MEDIA 撃退コロナ音頭 サボテンブラザーズ 





    ページトップへ