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日刊サンはロサンゼルスの日本語新聞です。 記事は毎日更新、求人、クラシファイドは毎週木曜5時更新。

第8回 ポエム・タウン

<成人の部 俳句区>


嶋 幸佑選     運動会心づくしのゆでたまご     ローペス文子

日刊サン賞    陰りゆく部屋でみつめる十三夜    鈴木清司

TJSラジオ選  盆踊り輪幾重にも幾世代      生地公男

ゲスト選者 久賀谷 亮 選   被爆児の老ひし祈願や原爆忌   生地公男

佳作      端居して里の話題のはてしなく      野島弘子

佳作      陰りゆく部屋でみつめる十三夜   鈴木清司

佳作      被爆児の老ひし祈願や原爆忌   生地公男


成人の部 選者のことば

「運動会―」。晴れ渡った秋空の下で繰り広げられる運動会。無心に走る子どもたちと、それを無心に見つめ、声援を送る親御さんたち。そんな状景がまず浮かぶ。この句は、運動会当日の朝、子どものために卵をゆでているところだろうか。頑張ってよ、そんな気持ちを込めながら。そこには、子どもの成長ぶりに満足し、ありがたいという思いを深める作者がいる。そんな心境が「心づくしのゆでたまご」からうかがえた。子どもを愛しむゆで卵だ。

「被爆児の―」。原爆投下からすでに六十八年。原爆忌そのものの影も幾分薄らいできたと聞く。幼少のころに被爆した子どもも、今はすっかり年老いた。しかし、老いても祈願である。原爆のない平和な世界へ向け、心を新たにする作者がそこにいる。

「陰りゆく―」。十三夜の月は中秋の名月の約一カ月あと、新暦で今年は十月の十七日だが、先詠みとして、佳作に入れた。十三夜は満月に次いで美しい月とされ、「後の月」とも言われる。太陽が沈み始めるころに昇ってくるから、ちょうど作者のいる部屋も薄暗くなり始めたころだろう。なぜ陰りゆく部屋の中にいるのか。その理由は示していないが、何か落ち込むことでもあったのではないだろうか。一人沈んでいたところに、十三夜が昇り始めた。心にほっと灯りが点ったように感じた作者。「みつめる」に、これから満ちていこうとする月に心を託そうとする作者の気持ちがうかがえる。

「端居して―」。年老いた夫婦だろうか。夏の夕方、縁側に掛けて二人で里のことを話している。うらやましい姿である。(嶋 幸佑)

「陰りゆく―」という書出しから秋の夜長の静けさがとても伝わってきました。華やかな場所で月を鑑賞するよりも、どこか淋しげな中で、静かに光を放つ月をしみじみとみつめることに日本の風情を感じます。異国の地にあっても、先人の教えに倣って、十五夜の中秋の名月のみならず、そのあとの十三夜にも静かに日本と同じ綺麗な月を眺めてみれば、秋をより一層実感できるのではないでしょうか。(日刊サン)

ひと夏の盆踊りの風景の中に、「伝統」という過去から今への流れと、「継承」という現代から未来へのラインが見えました。どの町内にも盆踊りが上手なおじちゃん、おばちゃんがいましたよね。そんな人たちの後について踊り続け、マスターした頃、“故郷”というものがしっかりと心に浸透しているのかもしれません。(TJSラジオ)

どの作品も味わい深いものがありました。選出した句について一言。
お盆前の広島では独特の空気が流れます。原爆の日、今年は十年以上ぶりにそれを感じることができました。「永遠の0」など戦争に関わるものがいつになくブームになり、近隣国からの圧力のためか愛国主義的な雰囲気が漂っています。「はだしのゲン」が一部の学校で禁書になるなどポリティカルな動きも聞きます。一方、原爆を経験した広島出身の方は、七十年近く経った今も、そのことを話すことに躊躇されます。そうです、被爆者はご高齢となり、姿を消していかれていっているのです。同時に彼らの記憶も。重い一句です。(ゲスト選者・久賀谷 亮)


<青少年の部 俳句区>


嶋 幸佑選     風が吹く色いっぱいに落ち葉舞う
ダップルグレイ小学校 白形小菊 10歳

TJSラジオ選  延長で一打に懸ける夏試合
サンマリノ高校 田中 澪  16歳

ゲスト選者 久賀谷 亮 選/日刊サン賞/佳作   水鉄砲飛び散りたるは笑い声
サンマリノ高校 田中 澪 16歳


青少年の部 選者のことば

「風が吹く―」。子どもらしい元気なところを買った。舞っている色いっぱいの落ち葉に、心を躍らせている作者。この句でふと、富安風生の「よろこべばしきりに落つる木の実かな」を思い出した。「風が吹く―」には「よろこぶ」という言葉はないが、「色いっぱい」「舞う」という言葉から、喜んでいる気分が十分うかがえる。

「水鉄砲―」。水が飛び散ったのではなく、笑い声が飛び散った、としたところがミソ。(嶋 幸佑)

「水鉄砲―」の句は、海で、川で、プールで、歓声をあげながら走り回り、水鉄砲で遊ぶ子ども達の姿が目に浮かびました。待ち遠しかった夏休みがやってきて、思う存分友達と、家族と、遊びはしゃいでいる子ども達の姿は元気にあふれていて、実に微笑ましいものです。いくつになっても水鉄砲で楽しく笑い合えるような、そんな無邪気な童心を持ち続けていたいものです。(日刊サン)

「延長で―」は、炎天下、息をころし滴る汗を拭う事も忘れるそんな夏の一場面、まるでアルプススタンドに座っているかのような気分になる一句。緊張感の中に思い出も蘇る想いがし、清々しさも感じられました。(TJSラジオ)

「水鉄砲―」の句は、多くの選者の方が魅せられた一句です。水しぶきと笑い声が同時にはじけている様子が浮かぶようです。また、暑い夏に涼む一瞬と季節がもたらす高揚感がよく表れていると思います。「動き」と「温度」と「気持ち」がこの短い言葉たちの中に躍動しているのがすばらしいです。(ゲスト選者・久賀谷 亮)

俳句 ゲスト選者

guest-haiku

久賀谷 亮さんプロフィル

イェール大学医学部神経精神科卒。日米医師免許。趣 味 :トライアスロン。TransHope  Medical / くがやこころとからだのクリニック院長。非営利団体Kokoro Wellness  Network代表。
http://kokorowellnessnetwork.org



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