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第6回 ポエム・タウン
<成人の部 俳句区>
嶋 幸佑選 あお楓風さそい来て花咲かせ 金子ミツ江
日刊サン賞 とうくからさくらの便りを聞きにけり つねお
TJSラジオ選 英字紙で折る紙かぶと五月晴 塚本 惠
ゲスト選者 坂田英夫選 啜るほどなき枇杷の実のたわわなる デ・アギラール芳江
佳作 英字紙で折る紙かぶと五月晴 塚本 惠
佳作 小篆 (せうてん) の読めぬ字眺め藤寝椅子 ロゼフスキー翠邦
佳作 雨の間に尼が手折りしてまり花 ふじたしづえ
成人の部 選者のことば
「薄い楓の若葉は、通す光を明るい緑色に染める。近くの公園に楓の木があり、初夏の今、その上品な美しさをみせている。「楓の花」は春の季語。紅色の小さい花だが、若葉との色合いが何とも言えない。「あお楓─」の句は、そうした情景を彷彿させた。風にさそわれて花を咲かせるという詠みに、優しさがある。ただ、この中七を「風にさそわれ」とすると、風がもう少しやさしくなるように思う。柴田白葉女の句に「花楓しづかにこころ燃ゆるなり」がある。
「英字紙で─」。こういう句に出会うと、思わずうれしくなる。アメリカならではの句だ。五月晴の季語が効いている。五月晴はもともと梅雨の晴れ間の意だったが、今では五月の風さわやかな空のことを言うようになった。まさにその気分が、この句にある。
「小篆─」。そのうち藤寝椅子からやすらかな鼾が聞こえてくるだろう。
「雨の間に─」は、詩情を買った。(嶋 幸佑)
「毎年春になると弊紙でも桜の開花ニュースを掲載するが、「とうくから─」の句のような思いで読んでくださってる方がたくさんいるのではと心に浮かびました。美しい日本の桜。遠く離れて実際に見ることはできないが心の中で故郷を思い出しながら春という季節の到来を心で感じている。大変共感出来る句です。(日刊サン)
勇ましい、可愛らしい武者の姿が目に浮かびます。幼子とともに兜を折った大人達もやはり兜を頭にのせ、どこまでも続くカリフォルニアの青空を未来への希望を込めて一緒に見上げているのでは。(TJSラジオ)
“啜るほどなき枇杷の実”この表現が、こと枇杷に関しては特別な感慨を持つ我々の世代には、とてもリアルである。これは一種の臨場感ともいうべきリアリズムでもある。 画の教室のシニアの女性が、先週この枇杷のマーマレードを作ってきてくれたが、とても美味しかった。さぞかし大変な仕事であったろうと思い、その労に感謝した。 この実は淡白で、品の良い味わいを持つが、普通の人家にある枇杷の木は、果実が小粒なのが多く、殆んど種ばかりと言う感じでもある。だから、面倒で採ることもしないで、そのまま腐らせて仕舞う人達が多い。 我々、飢えた経験を持つ年代の者たちには、この枇杷が懐かしくもあり、また思い出も多い。だから喜んで食べる。これらの事情が、食べてもらえないのに“実のたわわなる”という切ない最後の句に繋がるのであろうが、飽食の時代の人々には、なかなか判って貰えない感懐でもあろう。(ゲスト選者・坂田英夫)
<青少年の部 俳句区>
嶋 幸佑選 ちょうちょうです静かにしてね昼寝中 こどもの家 テイラー・キアナ 12歳
日刊サン選 なつが来た日本に行くよ楽しみだ こどもの家 林 秀 10歳
TJSラジオ選 朝起きるもっと寝る寝る寒い寒い こどもの家 テイラー・キアナ 12歳
ゲスト選者 坂田英夫選 はたけにはきれいなリンゴなくなった こどもの家 鍬(くわ)田ショーン 8歳
佳作 鳥きれいわたしがほしい白と青 こどもの家 エスピノーサ百合香 11歳
佳作 こいのぼり青いお空にとんでいる こどもの家 金田愛美 10歳
佳作 バック転けしきがまわる風を切る こどもの家 山城 彩 12歳
青少年の部 選者のことば
「ちょうちょうです─」。そう、蝶々も昼寝をするのです。静かに寝かせてあげましょう。やさしい作者です。
「鳥きれい─」。作者がほしい色である、白と青を持っている鳥。白い雲が立って、海岸に飛ぶカモメを思い浮かべました。
「こいのぼり─」。「とんでいる」という勢いがいいですね。
「バック転─」。「まわる」「きる」という、動詞の終止形を繰り返すことで、バック転の様子が目に見えるようです。(嶋 幸佑)
長い長い夏休み。おじいじゃんやおばあちゃんや日本の家族に会える。アメリカとは違う夏を日本で過ごす。「なつが来た─」の句から、本当に楽しみにしている気持ちが伝わってきます。子供の頃過ごした夏休みの始まりのワクワクする気持ちを思わず思い出しました。(日刊サン)
この季節、随分起きやすくなったでしょうね。早起きは三文の徳と言いますが、暖かな南加でもやっぱり寒い朝はお布団から出られない、そんな素直さが素敵な一句。寝る寝ると寒い寒いの繰り返しが効果的。 (TJSラジオ)
「はたけには─」の句は、子供らしい率直な表現である。今から大きく成長しようという繊細で多感な時期の鋭い感覚が、祭りの後的な“もの悲しさ”、または、人生そのものに漂う悲哀感に、突然目覚め、それをまともに視たということか。その表現が、まったくそのままでなされたのが良かった。(ゲスト選者・坂田英夫)
俳句区ゲスト選者
坂田英夫さん プロフィル
長崎市出身、ロサンゼルス在住。現代油彩画家。数多くの展覧会を主宰し、韓国、インド、日本作家たち4人でLELA:Lantern of the East in Los Angeles を立ち上げる。2011年に第19回世界芸術祭をBarnsdall Museumで開催した。
<日刊サン選「スポットライト俳句」 成人の部>
隅田川桜の下でハーモニカ 詩月直竹
行く春にうしろ姿の君を追う 鈴木清司
神無月たびのお宿に福の神 メグミ・フルヤ
外っ国で女度胸に更衣 鈴木ロジー
春の芽に雨の子泊まり虹と輝く 平 凡人
もう行けぬ忍ぶふるさと柿若葉 野島弘子
<日刊サン選「スポットライト俳句」 青少年の部>
映画かんいろんないびき大合しょう こどもの家 石田 杏 10歳
おしりさまうんこがでたよおみごとだ こどもの家 金田愛美 10歳
タフなやつ不良と言うがハートある こどもの家 畑 陽介 12歳
宿題が多すぎますよストレスだ こどもの家 福田 華理那 13歳
水を飲む色がなくてもおいしいよ こどもの家 三澤 啓 11歳
春が来た雨が来ました花がさく こどもの家 奥田ショーン 11歳
青いくつ足にはいたらあたたかい こどもの家 マラビー舞愛 9歳
もえるバラきれいとこわいダンスする こどもの家 ケサダまい 9歳
とりとぶたお肉になるよかなしいね こどもの家 伊予谷メリッサ 13歳