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第3回 ポエム・タウン
<俳句区 成人の部>
優秀賞 秋深き新書に赤き栞の葉 野島弘子
日刊サン賞 初冬や擦り寄りてくる老し猫 野島弘子
TJSラジオ賞 月光を裏庭に張り深呼吸 塚本惠
佳作 アンとボブためつすがめつ千歳飴 塚本惠
佳作 小さ目のターキイで足る感謝祭 ケイコ・オコンネル
佳作 秋暑し似合ひもしないイヤリング 鈴木ロジー
成人の部 選者のことば
「秋深き─」は読書の秋にふさわしい句。だが、眼目はそこではない。落葉の栞は、日が経つとすぐに変色してしまうもの。新書に挟まれている落葉がまだ赤いということは、拾ってからまださほど経っていないのだろう。しかし、「秋深き」である。その栞から、やはり同じように落葉を栞にしていたころのことを思い出しているのだ。この季題が、しんみりと、そうした様子をうかがわせる。季題の効果で優秀賞とした。栞の赤から、赤い表紙の岩波新書も連想される。
アンとボブは、おそらく非日系と日系の若夫婦の子どもなのだろう。日本の伝統に沿って七五三のお祝いをした。珍しい千歳飴に見入る二人。その様子を目を細めて見ているのは祖父か祖母か。アメリカならではの句の面白さがある。
「小さ目─」は、長年連れ添った夫婦の満たされた気持ちが伝わる。
「秋暑し─」は、どのイヤリングにするか決められないでいる心境に、季題がマッチしている。(嶋幸佑)
冬に入り寒くなってくると、心細く心さみしくなってくるものです。そんな時に寄り添える存在というのはとても暖かく愛しく大切なもの。「初冬や─」からは筆者と猫とのほのぼのとした深い信頼感が伝わってきます。老いてきた猫がどうかこの冬を超えて。また来年も再来年も寄り添いながら冬が越えられますように、愛しい者といくつもの冬を一緒に越えられますようにそんな気分にさせてくれる句です。(日刊サン)
少し冷たくなった空気が月光により透明度を増している様が思い描かれました。ひとりきりで月光というスポットライトを浴び、生きる喜びや苦しみを身体に内に収める、そんな舞台の主人公になれる一句ですね。(TJSラジオ)
<俳句区 青少年の部>
優秀賞 さむいからおふとんまいてあさごはん MK Labキンダー 青木太良 4歳
日刊サン賞 雪の中強く戦う小さな芽 ソーテル日本学院高等部 加藤秀利 17歳
TJSラジオ賞 くりたべて落ち葉集めて焼き芋を ソーテル日本学院高等部 中野里穂 14歳
佳作 プレゼントたくさんあけるクリスマス ソーテル日本学院高等部 重永ゆか 17歳
青少年の部 選者のことば
「今回から設けられた「青少年の部」。年齢層がけっこう幅広いため、選考基準が決めにくいが、作者の元気な様子が伝わってくると、やはりうれしくなる。重季(一句の中に季題が二つ以上あること。原則として、ふさわしくないとされる)など無視して、取りたくなるものだ。
「さむい—」は、子どものそんな純真な姿がいい。寒いから、ベッドの中でもじもじしていたところに、お母さんから「ごはんよ。早く来なさい」と声を掛けられたのだろう。「よしっ」と、蒲団を体に巻いて食卓に着いた。その動作を描写しただけだが、勢いがある。
「プレゼント—」にしても、うれしさいっぱいにプレゼントを開ける様子が伝わってくる。(嶋幸佑)
誰もが時には何かに負けそうになったりしながら生きている。特に青年時代は自分がちっぽけな存在に思えたり何かに押しつぶされそうな気持ちを抱える事もあるでしょう。そんな時にふと見かけた小さな芽が雪の中で凛と芽吹いていてそれが戦っているようにも見え、そこに自分を重ね自分もこうありたいと思い、こうあろうと決心をする様が目に浮かびます。厳しい寒さの中で戦う小さな芽は人の生き様に重なり、「雪の中—」は読んだ人の心の中でもその情景が目に浮かび逆境に負けずしっかりやっていこうと思わせてくれます。(日刊サン)
「たき火が上手に出来る人が一番偉い」という日本の冒険家の言葉を思い出しました。食で秋を味わう、可愛くて素朴で素敵です。こんな経験を多くの子ども達にさせてあげたい一句ですね。 「秋深き─」は読書の秋にふさわしい句。だが、眼目はそこではない。落葉の栞は、日が経つとすぐに変色してしまうもの。新書に挟まれている落葉がまだ赤いということは、拾ってからまださほど経っていないのだろう。しかし、「秋深き」である。その栞から、やはり同じように落葉を栞にしていたころのことを思い出しているのだ。この季題が、しんみりと、そうした様子をうかがわせる。季題の効果で優秀賞とした。栞の赤から、赤い表紙の岩波新書も連想される。アンとボブは、おそらく非日系と日系の若夫婦の子どもなのだろう。日本の伝統に沿って七五三のお祝いをした。珍しい千歳飴に見入る二人。その様子を目を細めて見ているのは祖父か祖母か。アメリカならではの句の面白さがある。(TJSラジオ)