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詩の窓辺・第十二回
毛虫 ギィヨーム・アポリネール(堀口大学訳)
働くことは金持ちをつくる
貧乏な詩人よ、働かう!
毛虫は休なく苦労して
豊麗な蝶(てふ)になる。
堀口大学訳詩の集大成とも言える『月下の一群』(大正十四年刊)の中から、『毛虫』を鑑賞する。
僕は書斎の壁に、この詩を拡大したコピーを十五年ほど前から貼り付けている。何故ならば、往時のアポリネールの状況と自分自身が、だぶって見えてきたからだ。
さて、『毛虫』は僅か四行の短詩であるが、二つの構成に分かれて成り立っている。即ち一行目と二行目が第一部であり、三行目と四行目が第二部である。
第一部は、貧困に陥った時の自問自答である。それは詩を書く努力が、衆生世間に理解されないからである。けれども、生活していくためにはお金が必要なのである。
第二部は、詩人の魂はイマジネーションの美であって、決して物欲に溺れるものではない、と謳っている。従って『毛虫』は、相剋(そうこく)の哲理に煩悶するアポリネールの絶叫であるのだ。