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第16回 ポエム・タウン

<成人の部 短歌 入賞作品>


岩見純子選   積年の恨みを許せし母の顔病床なれど柔和になりし   たなか きんいち

佳作   お年玉少額なれどひとりづつ知恵の言葉を添えて渡せり   麻生三晴

佳作   煮えるのが待てずにつつくすき焼きの匂いと味が家族を寄せる   アーサー中根

西岡徳江選   凍てつきし水面ゆるみて映る木々雪の岸辺は小さな春に   たなか きんいち

佳作   編み物の手を止め庭に目をやれば清しシクラメン陽だまりに笑む   キャシー中原

佳作   生前の父を撮りしは晩秋の紅に咲く山茶花を背に   山崎萬里子

ゲスト選者 田中秀選   二十まで直く育ちしわが娘晴着縫い上げ思い万感   麻生三晴


<日刊サン選 スポットライト短歌>


日本町袴をつけし「祝」の子律律しく行くを佇ちて見送る   小池美代子

さわさわと日差しを浴びて揺れ動くひまの葉っぱに蜂の飛びかう   土肥明子

生きのびて試練を越へて勝ちぬれば甘き光陰肌にやわらか   ワーレス信子

早や四年来るも復興尚遠く波跡に未だ雪を残して   生地公男

さざ波のごとくにふるえた我がむねの遠き想いにしばし憩いて    金子ミツ江

柿くえば猿蟹合戦うかびきて吾が裏庭のリスを追いやる   日高かおる

いつの世も奇跡の言葉“ありがとう”敬意と感謝に触れ合う心   芙佐子スティヴンソン

米人とし祝う年末日系とし祝う年始も独り身せわし   神野豊子

ヤムと呼ぶ芋蒸してみる疎開地でこればかり食みわれ育ちたり   古田和子

部屋中を片づけ終えて君を待つ不来方と知りつつ心で待ちいる   工藤紀美子


選者のことば

―選者・岩見純子

人は、今も昔も同じようなことを思い、考えるものだ。投稿された短歌にもそれが反映している。作者は違っていても、以前、何度も読んだことがあるような投稿歌も多い。同じことでも、見方や表現方法を変えてみるのもいいと思う。
「積年の―」。 「許す」ということは、言うのは簡単だが、とても難しいことだ。結句の「柔和になりし」で救われた思いがする。内容が深く、リズム感もあり、わかり易い秀作。
「お年玉―」。 「知恵の言葉」をもらった子供たちが、どんな反応をしたか、想像するのも楽しい。
「煮えるのが―」。 結句の「家族を寄せる」が、この歌を味わいのあるものにした。

―選者・西岡徳江

歌を詠う時、時には冒険をしてはどうだろう。老いを嘆ぐより、謳歌する歌がよい。日常に埋まるより、脱皮するのもよい。違う視点から歌を詠む楽しさを見つけよう。
「凍てつきし―」。厳しかった冬から春へと移る光景を丁寧に詠んで成功した。4句と結句の表現が美しい。雪国に住む人の歌であろう。
「編み物の―」。日常のふとした幸せは、このようなものであろう。さりげない歌の中に温かさを感じる。
「生前の―」。紅の山茶花を見るたびに、作者は亡き父を偲ぶことができる。紅は悲しみの色ではなく、父と子をつなぐ証でもあろう。

―選者・田中秀

全体的に故郷を想い懐かしむ歌や今は亡き人を想い偲ぶ歌、社会の流れを組んだ時事的な歌、そして毎日の生活の苦労や、楽しげな様子を感じることができる歌が多かったです。
「二十まで―」。母の娘に対する気持ちと努力が強く伝わってきました。子が二十という一つの区切りを迎える際に「晴着を縫い上げ思い万感」娘を祝うと同時に母としての一つの卒業式でもある成人式。私には同時に、「お母さん今までありがとう。そしてお疲れ様。これからも改めてよろしくお願いします」。という娘の声が聞こえてくるようです。家族って本当に大切ですよね。



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