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第16回 ポエム・タウン

<成人の部 俳句 入賞作品>


嶋幸佑選   松過ぎて何時もの人の街になり   野島弘子

佳作   頬杖の窓寒月の子守唄   古賀由美子

佳作   ケツチンもまだ眠りおる妻の春   那智高雄

佳作   八十路坂夫の掌ぬくし冬牡丹   鈴木ロジー

日刊サン選    みかんむく炬燵恋しくなりにけり   内 アリス

TJSラジオ選    湯豆腐やゆらり揺らいではにかんで   ロペスふみこ

ゲスト選者 田中秀選   大晦日沈む夕日と過ぎた日々   鈴木清司


<日刊サン選 スポットライト俳句>


草枕異郷に冴える冬の虹    三崎廉

煮干し出汁ゆっくり馴染むか残り餅   ノブとく

人恋うはかなしきものと雪女   石井志をん

満面に笑みをたたえて福寿草   麻生三晴

望郷に屠蘇は地面で国訛   生地公男

反り返り冬の体をほぐしおる   浅子恵

また一人竹馬の友がこの世去り   詩月直竹

島帰る淋しさ言はず又来てね   ロゼフスキー翠邦

かじかむ手ギュッとあなたのポケットへ   古賀由美子


選者のことば

―選者・嶋 幸佑

今回もたくさんの力作が揃いました。選は回を追うごとに難しくなってきているのですが、選者としてはうれしく思います。
ただ、ひとつ気になることを。これはけっこう目につくことですが、「なるほど、そうですね」と、その句を詠んだ気持ちは分かるし、その気持ちに同感はするものの、もう一つ作者の感動が伝わってこないことが往々にしてあります。それは、作品が作者の見たことや納得したことの報告に終わっているためです。もっと言えば、感動の報告に終わっているためです。俳句は、その感動を十七文字で作り出す作業です。読んだ人に、感動を覚えてもらう作業です。それを、客観的な描写で行う。写生で行う。なかなか難しい作業ですが、それだけに、やりがいもあります。一つ、なるべく形容詞を避けて作ってみてください。形容詞は、ともすれば、作者の、その時の心情吐露に終わってしまうことがあるためです。そういう句は、後に作者ご自身が読み返してみても、「なんでこのことに感動したんだろう」と、その時の感動をその作品から蘇らせることが難しいでしょう。
「松過ぎて―」。なかなか俳句にたしなんでおられる方のようです。商店や一般の民家で飾ってあった門松や注連飾りがとれ、新年のさまざまな行事も終わって、普段の生活が戻ってきました。そんなほっとした気分。また仕事に精を出す日々です。それを「人の街」と描写しました。この措辞が利いていますね。
「ケッチン―」は、その松の間の妻の気分を、静かなキッチンに重ねています。
「頬杖の―」。これはなかなか詩情がある句です。ただ、「頬杖の窓」と「寒月の子守唄」とに、印象が二つに割れてしまった感が否めません。「頬杖の窓に寒月子守唄」としたら、中七で切れて、その切れの間に、子守唄の静かな調べが響くようになるのではないでしょうか。
「八十路坂―」。冬牡丹の季題が生きています。

―選者・日刊サン

「みかんむく―」。日本にいた頃の習慣が思い浮かび、すごく懐かしく暖かい気持ちになりました。アメリカでは、セントラルヒーティングで各部屋が暖かくてよいのですが、日本ではなかなかそうはいきません。私が日本にいた頃は、冬になるとこたつが出て大変うれしかったです。みんなでこたつの中に入り、テレビを見たり、家族団らんの時でした。現在、日本では青少年の犯罪が多く、家族の絆も少なくなってきているような気がしていますが…。 他にも気になる句がありました。「かじかむ手―」はすごく愛情がある句で心がキュンとしました。「草枕―」は少し淋しさと故郷の思い、「また一人―」は老いを考えさせられる。「満面の―」は幸福な笑顔が感じられます。みなさんの句の中にある故郷、優しさ、思いやりなど、今の日本には少なくなってしまったかもしれないと思うような要素が今回の俳句の中に多く含まれていて、心がなごみ、うれしくなりました。

―選者・TJSラジオ

「湯豆腐や―」。お豆腐と句の中の言葉が鍋の中で共にスイングしているかのようなリズム感、そして目に浮かぶ情景は、こたつに入った初々しいカップルが湯豆腐を囲む夕餉の一場面。あったかくて、爽やかで、きっと鍋の中にはお豆腐と一緒に柚子の皮も揺れているんでしょうね。

―選者・田中 秀

「大晦日―」は印象的な句でした。一年という長くも短い時が経ち、そこには綺麗な夕日があり今まで過ごした年月を数え思い出にふけると同時に、「これからの時間を有効に使い豊かに過ごそう」ということに気付く美しい句であるため選びました。今年も豊かな時を過ごしましょうね。  日常の生活の一部を切り取った句や情勢に関する句、綺麗な情景が素直に思い浮かぶ美しい句などがある中「島帰る―」も印象に残りました。この句は季語と思しき音が「島」しかなく、「島」は現代俳句協会によると季語ではないのです。しかし人により「島」を季語として使用する場合もあるのです。この句は今の私にぴったりでした。私は今、インターンでここに来ています。そのため帰国の日が近づくにつれて友人に「帰るのは淋しい、もっとアメリカに居たい」と言っていました。その中でこの心のこもった優しい句に出会いました。私は「淋しさは言はず」是非またここに帰ってきたいです。



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