ロサンゼルスの求人、クラシファイド、地元情報など
第13回 ポエム・タウン
<成人の部 俳句 入賞作品>
嶋幸佑選 二世週五世の稚児や紅の口 生地公男
佳作 郭公の声しみこみし古帽子 麻生三晴
佳作 爽やかな庭引きよせてガラス窓 内アリス
佳作 万天の星従へし夏の月 ウィルソン千恵子
日刊サン選 ロス在住一度も聞かぬ蝉の声 詩月直竹
TJSラジオ選 盆踊り思わず輪に入る郷の唄 野島弘子
ゲスト選者 福岡俊祐選 白き帆や夏燦々と海碧し ウィルソン千恵子
成人の部 選者のことば
―選者・嶋 幸佑
今年の二世週祭も終わったが、読者の皆さんは、出かけられただろうか。今年もさまざまな展示があり、パレードや街頭音頭と、形としては、これまで続けてきているプログラムを踏襲した形だが、よく見ると、参加している人たちの顔ぶれがちょっと違うように感じられた。街頭音頭は特に、若い人、しかも小さい子どもたちの参加が目に付いた。それも、非日系の子どもたちの姿だ。これから二世週祭はどのように変わっていくのだろうか。
「二世週─」の句は、そんな思いを裏に秘めながら、日系五世の稚児の口元にすべてを託した。一読して理解できる分かりやすい句だが、作者の思いは深い。
「郭公の─」は、ひと夏、野に遊んだ時にかぶっていた帽子への愛着を詠んだ句。古帽子とあるから、その帽子をかぶって毎年のように出かけていたのだろう。帽子を眺めながら、遊んだ野が脳裏に広がっていくのを感じている作者である。
「爽やかな─」は「庭引き寄せて」の措辞に感じられる作者の感性をかった。窓は当然ガラスでなければならないだろう。
「万天の─」は「満天の─」が正しい。その誤字を無視して、あえて佳作としたのにはわけがある。「夏の月」の季語がなんとも楽しいからだ。月は秋の季語だが、夏の月には、秋の月にはないものがある。まず、赤々とのぼる、火照るような感じ。そして、夜半には、涼しさの趣が備わる。「みなの衆、今宵はゆっくり涼んでくれたまえ」とでも言わんばかりの、ちょっと親分肌の、それでいてどこか親しみを感じさせる夏の月。そして、作者もその月に従うのだった。さて、これから季節は秋。多くの季語がある。季語とのいい出会いを期待したい。
―選者・日刊サン
今回は夏のいろいろな風景や思い出がたくさんおりこまれていて選ぶことが大変難しくて難儀しました。「前略の─」、や「夏休み─」、また「パレット─」、「祖父の目─」など良い句ばかりで皆さんの句のうまさが表れているようでうれしく読ませていただきました。また、これからも俳句をもっと身近に感じて楽しませてほしいです。
夏と言えば蝉の鳴き声は当り前のように日本では思っていましたが、ロスでは蝉の声を聞いたことがないですね。この句を読むまで気づきませんでした。なるほど日本では蝉の声は夏の風物詩ですね。どこに行っても日中蝉の鳴き声でうるさかったように思います。ロスと日本の夏のちがいが蝉の声にあるように思います。
このアメリカでは蝉の鳴く州はあるのでしょうか。蝉の声少し聞いてみたいですね。懐かしく思います。
―選者・TJSラジオ
日本で夏を過ごした事がある方ならば、必ずそれぞれの盆踊りの風景が思い起こされたのではないでしょうか?啄木の「訛り」に共感を覚えるのと同じようにやはり盆踊りも同じですよね。輪の中に入り、踊り歩くその時間は、楽しくまた懐かしい夏のひととき。そんな光景が目に浮かぶようです。
―ゲスト選者・福岡俊祐
今回は「盆踊り」「花火」「西瓜割り」など季節を感じる言葉が多く含まれていたことが印象的でした。選ばせていただいた句はカリフォルニアの強い陽射しの中、白い帆のボートが真青の海に浮かんでいる様子が目の前に見えると錯覚してしまうほど情景が思い浮かべやすい内容です。強い陽射しと碧くどこまでも続く海のもと自分自身を見つめなおしつつ活力を蓄えているようです。カリフォルニアの乾燥した空気、爽やかな風が清々しさも感じさせます。
<日刊サン選 スポットライト俳句>
夏休みこれからずっと骨休み 鈴木清司
横町を曲りて激し蛙の音 ワーレス信子
朝ぐもり日中を知る夫無口 鈴木ロジー
父の日やぶらさがりたい父の腕 ローペス文子
幾度も岩より落ちし夏鴨子 のぶとく
手のひらに木漏れ日集め夏帽子 古賀由美子
庭野菜牛馬仕立てて迎え盆 生地公男
ひまわりに元気もらって庭仕事 麻生三晴
旅果の山の温泉銀河濃し 野島弘子
子に送る母は夜業の笹だんご 内アリス
お盆にはガラガラになる大東京 詩月直竹
俳句 ゲスト選者

福岡俊祐プロフィル
神奈川県横浜市出身。明治大学政治経済学部3年生。専攻はマクロ経済学と統計分析。趣味はスポーツ観戦、ランニング、テニスなど。現在働くとはどういったことなのかを学ぶため日刊サンでインターン中。