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第11回 ポエム・タウン
<成人の部 短歌>
西岡徳江選 現実をしばしば離れて瓶振れば抗癌剤に「ドレミファ」のあり マスグローヴ羊子
佳作 朝露が真珠のごとく葉に遊び森の朝日は水面に遊ぶ たなかきんいち
佳作 ぼんぼりの灯にゆらぐ内裏びと夢かうつつかひなの夜更ける 麻生三晴
岩見純子選 山道に続くジョギング乙女らの細き足首地を蹴りてゆく 石井志をん
佳作 母の家に訣れ来し日の山桜いまも心にほのぼのと咲く マスグローヴ羊子
佳作 道端でほこりを被った蔦からもやさしく光る新芽がのぞく 古田和子
ゲスト選者 当銘貞夫選
人生の後編を書くエッセイは苦楽の話題もろ手に溢れ 鈴木ロジー
成人の部 選者のことば
薬瓶を振ったら、ドレミファと聞こえたという。それも抗癌剤である。治療中でも、生への余裕と遊び心を表現したすばらしい歌である。
朝露の遊びと朝日の遊びが対照的である。またア行の繰り返しが耳に心地良い。
ひな祭の夜をファンタジーに詠って成功した。先入観や固定観念を取り除き、自分の感性と言葉で詠ってみよう。(西岡徳江)
多数の応募に感謝。上の句(五、七、五)は素晴しいのに、下の句(七、七)や結句の言葉が、上の句にうまく続いていない歌が数首あり残念に思った。
「山道に― 」。 結句「地を蹴りてゆく」が動詞止めになっていて、全体を動きのあるものにし、ジョギングとマッチして、とてもいい。
「母の家に―」。 「心にほのぼのと咲く」は特に佳。「訣れ」は「別れ」の方がいい。
「道端で― 」。 口語短歌。わかり易くていい。新芽に注がれている作者の温かい眼差しがある。(岩見純子)
今年は世界遺産に選ばれた富士山やユネスコの無形文化遺産に登録された日本の食文化を題材にした歌などが目立った。相変わらず恋、定年、悲恋の歌など人生、あるいは自然の景色や花、鳥などはもちろん定例である。反面インターネットやアイフォンなどの発達で世界が狭くなった性だろう、望郷の歌はあまり見かけなかったように感じた。人生の後編を書くエッセイや苦楽の話題など筆者は70歳(古希)を過ぎた年齢に達したのだろうか。加齢への悲哀は感じられない、むしろ前向きに生きる姿勢に共感する。 (ゲスト選者・当銘貞夫)
俳句 ゲスト選者

当銘貞夫さんプロフィル
沖縄県生まれ。1970年渡米。1998年以来琉球新報海外通信員、約600の記事が掲載され今日継続中。2005,6年北米沖縄県人会会長。2008年日本エッセイスト・クラブ会員となる。同年「アメリカに生きる」を出版。2014年南加県人会協議会会長となる。
<成人の部 日刊サン選「スポットライト短歌」>
グリーンティたくわんかじり創作に短歌吟唱珍味弥増す ワーレス信子
紅、紅と燃え立ち登る春の日に活力もらいひと日を歩む 工藤紀美子
海に向く広きリビングルームには日がな一日潮が匂う 小池美代子
恋人に望み心を打ち明ける散る花梨もきっとそうかと 神野豊子
チュンと跳ねチュチュンと唄うすずめたち春の日向に家族の集い 平 凡人