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第10回 ポエム・タウン
<成人の部 短歌>
岩見純子選 真帆掛けて引き網漁の小船行く遠浅の海にシマエビ跳ねる 平 凡人
佳作 街灯の明かりを頼り寒稽古白き道着が浮かぶ砂浜 京乃一人琴
佳作 たなごころ合せて黙す波の果て帰らぬ人あり東北の海 生地公男
西岡徳江選 占いのページに潜む千代紙の栞を抱いて本は帰り来 石井志をん
佳作 真帆掛けて引き網漁の小船行く遠浅の海にシマエビ跳ねる 平 凡人
佳作 吹きさらし乳のみ子庇う物乞いに一ドル札をそっと手渡す 麻生三晴
ゲスト選者 金丸智美選
早足の夫かたはらに朝の道後れがちにも二哩(マイル)あゆむ 葉子マスグローブ
成人の部 選者のことば
短歌の部の選をしていて思うことは、私もいっしょに勉強をさせて戴いているということ。投稿された歌をよく読む。使われている言葉を調べる。好きな歌に出会うと胸がわくわくする。こんなに素晴しい機会を与えて下さった方々に感謝をしている。
「真帆掛けて―」。真帆(まほ)に潮風を受けながら、遠浅の海にいるシマエビ漁に行く小船の歌。作歌をするには、結句(最後の七音)が特に重要、と聞く。この歌の結句「シマエビ跳ねる」には、大漁は間違いないという期待と弾む心がとてもよく表れていて、活気に満ちた一首。
「街灯の―」。薄明かりの砂浜に道着の白が浮ぶ。墨絵のような風景。白と薄黒の対比がとても佳い。
「たなごころ―」。両手を合わせて冥福を祈る歌。まとまっていて、リズム感もある。(岩見純子)
入選歌は恋の予兆をも感じさせる歌である。恋の歌、仕事の歌、時事歌と何のジャンルでも構わない。常識にとらわれないで、自分の感性を通して詠ってみよう。
「占いの―」。本は帰り来 と表現した点が斬新的だ。たぶん、占いに良いことが書かれていたのだろう。千代紙の栞がそれを裏づけている。希望と未来を抱いて帰ってきた新鮮な気持ちがうかがわれる。
「真帆掛けて―」。光景が目に見えるように美しい。しかし、これは漁業の現場の歌であり、シマエビを捕獲している最中である。作者は陸側から眺めているのだろう。帆の白さ、海の青さ、エビの光から色彩と躍動のある歌となった。
「吹きさらし―」。よく詠われる類の短歌であり、個性や新鮮さはないが、時事歌として選んだ。アメリカの社会現象に限らず、世界のどこかでも、似たような痛ましい光景が続いている。(西岡徳江)
私は本紙で「ポエム・タウン」を担当しております。そのお陰で初めて短歌に触れる機会に恵まれました。これまで短歌を詠んだこともないので、選考する前は「私に分かるかしら?」と不安でした。しかし、一首一首読んでいくと、短歌には物語が凝縮されているようなダイナミックさを感じました。作者の意図とは全く違うかもしれませんが、観賞する側が想像を膨らませて楽しめる“自由”さもおもしろいです。
「早足の―」。長く連れ添い、アメリカで一緒に年を重ねたご夫婦の姿が浮かんできました。お互いの一歩一歩の大きさは違うけれど、ともに歩んできた二人。また新しい一日を二人で迎えられた喜びをかみしめている様子が感じられました。(ゲスト選者・金丸智美)
<成人の部 日刊サン選「スポットライト短歌」>
諭さるる息の顔見つつパソコンの前にカードを手書く歳末 神野豊子
初日浴び自然をことほぎ歌うたう終わりなき世と願いを込めて シールス由利子
四◯五(よんまるご)そう呼んでいた高速を405(フォー・オー・ファイブ)と呼ぶようになり 板倉英潤
【お詫びと訂正】十二月十九日付けの本紙十八ページに掲載した「第9回ポエム・タウン」の短歌部門・成人の部にご応募いただいたはるか浦さんの短歌「孫の代ー」を部分だけ「スポットライト俳句」に掲載してしまいました。作者の方と読者の皆様にお詫び申し上げるとともに、正しい『孫の代ー』を掲載いたします。
孫の代までに伝わる留袖に祖母は添えなむ嫁ぎ日の夢 はるか浦