敬老シニアヘルスケア4施設売却と日系高齢者の今後 vol.1つづき
2015-11-23
11月16日に、敬老を守る会」代表の井川チャールズ氏と同代表役員のジョナサン・梶氏の連名でカリフォルニア州司法省司法長官局、ターニャ・イバネズ司法長官指導官に送った返書。
2015年11月16日
加州ロサンゼルス、サウス・スプリング街300-1702号
カリフォルニア州司法省、司法長官局
司法長官指導官、ターニャ・イバネズ様
敬老高齢者介護サービスの件について
イバネズ様へ
先日、2015年11月5日に御局が承認された敬老の売却を撤回することはできないというお便りを頂戴致しました。この度はそれに対し、お返事させていただきたく存じます。
私どもはそのお返事に対し、重大な懸念を抱いております。(1) 司法長官の敬老売却の承認は、市民集会なしで行なわれました。そのため承認される以前に、適切な財政状態・業務状況などの内容の公開であり、市民よりの重大な情報提供の機会が与えられる場を逸しました。(2)市民集会が行われていた場合、敬老の提案が敬老にとって公平を期しており、かつ敬老施設の現在、また将来の住人が充分に保護されるよう客観的に再調査されていたかもしれません。
御局が市民集会の免除を決断されたことに対し、勿論私どもはそのような権威をお持ちだということは存じておりますが、それが司法長官の持つ、市民や一般大衆を含む、受ける側の人達の立場を守るという責任まで免除されるわけではない筈です。私たちの立場を守れる地位にあるのは、司法長官だけなのです。敬老側からの60の市民集会を開いたという主張を鵜呑みにし、御局が市民集会開催を免除されたということはまことに遺憾です。これらの集会をつぶさに調査致しました結果、この集会はすべてパシフィカに拘って来る以前のデータです。それのみならず、御局が不許可としたエンザインへの売却以前のデータを使っています。エンザインへの売却以前の集会が今現在進行中のパシフィカへの売却の通知をしたという資料になるとは一体どういうことなのでしょうか。
敬老を守る会が案じる二つ目の理由は、もし市民集会が実地されていたら、敬老の今回の売却計画を、より客観的に審査することが可能だったということです。その一例が時期遅れの物件の鑑定書で、古い評価価格を正当なものと判断しています。それだけではありません。この鑑定書はエンザイン売却問題以前のものです! 2013年の査定から地価は高騰している筈です。もう一つの問題はパシフィカの欠陥です。ノースカロライナの福祉局の捜査で、度重なる州の規律違反が発覚し、パシフィカの成人介護免許は剥奪されています。私ども市民は、御局がこの問題をきちんと探索されたか知りたく存じます。もし市民集会で、この問題が公開されていたなら、このような問題も開示され、対処されていたのではないでしょうか。
以下がこれまでの調査結果の要約です。
1.会社法5914(a)に基づくと、敬老はNPO法人の資産が営利企業へ売却されるような事態が起きた場合、司法長官局の承認を得る必要があります。さらに、(1) 御局の承認には、そこの居住者でありかつ一般市民にとり、そこの医療サービスが利用可能であるか、又は入手できるのかも含まれます(会社法5917)。(2) 正式の決断をされる以前に、一回以上市民集会を行なう義務があります (会社法5916)。(3) 5914(c)を実行するに当たり、5914(a) の市民集会を免除することは可能です。よって御局は敬老が市民集会なしで売却を行なうことを許可しました。ただし現在と将来の影響を受ける人達、一般市民の保護への責任までをも免除することはできません。御局は市民を守ることのできる唯一の機関です。
2.敬老施設は、日本語を話す市民のニーズである、2カ国語でのサービスが提供できる唯一の機関です。米国中どこを見ても、このような日本語や日本の文化で対応できる施設はありません。敬老の居住者の多くが自宅を売って敬老に移りました。引退者ホームの住人達は自費で家賃を支払っています。ところが、この人達は間もなく家賃の値上げ問題にぶつかるようになります。支払える限度額を超えてしまうかもしれません。これはこの居住者達にとり経済的、精神的な観点どちらから見ても大変悲惨な状況を呼び起こします。居住者には「5年以前に死にたい」と言っている人もいる位です。
現在の居住者敬老介護施設、また中間介護施設の居住者の60%から70%、或は3分の2までが、メディケアとメディキャルの二つの国家保険に経費を依存しています。それ以外の人々は国家から何も支給されていません。他の介護施設はそれ以上に国家保健に依存する居住者が多く、経済破綻を生む可能性も高いです。
敬老はミリオン単位の巨額の寄付、誠意のある惜しみない献金をする人達の存在があって初めて、他の施設と比較して、景気の下降など、あらゆる難局に際しても立ち向かう力のある遥かに条件の良い施設です。
パシフィカは営利団体で、不動産の開発会社です。その経営理念の中核は日系市民の引退者へのニーズを叶える為ではなく、儲けを出すことにあります。私たちはこれがただのサービスの変換ではなく、売却であるということをはっきり認識する必要があります。御局は売却条件として、臨時に何かを要求することは可能です。しかし売却条件は、時期がすぎたら自然消滅してしまいます。この臨時のサービス期間を越えたら、何が起きると思われますか。老人を見捨てるなどということは倫理的、道徳的侵害です。これまで丁度手頃な値段で、言語の上でも文化的にも安心して暮らせた我が家を失い、引き起こされる住民の精神的な苦痛、怒りや苦悩は組織的な老人虐待と言えはしないでしょうか。
3.敬老の経営陣に対する疑問があります。これまで寄付金を集めるに当たり、間違った、あるいは誤解を招くようなことがなかったかということです。寄付は殆どが敬老引退者施設や介護施設の維持継続の為になされています。寄付金を受け取る際、その献金をする人々、あるいは企業などに敬老の今後の変化を伝える義務があります。ところがそれは公にされず、透明な形でなされませんでした。
4. 売却を正当化するため、間違った言い訳が作られました。敬老側は売却への決断は、日系人口の統計学的変化や寄付の減少によるものだと主張しています。世代交代により、敬老の需要低下を促したと言うのです。しかし、それとは裏腹に、現在の居住者の80%は戦後米国に移住した日本語を話す人々です。第二次大戦以後に移住した日系一世が現在敬老に居住しており、家賃も医療費もきちんと納めています。戦前の日系社会と戦後日系社会では人口構成その他いろいろ変化はあります。けれども2カ国語での引退者、介護ケアはまだ必要とされています。つい最近売却が発表されるまで日本人、日系人の高齢者で敬老の入居者の希望者に対するリストは、順番待ちでした。
(つづく)

