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特別寄稿

循環式ライフスタイル   アクティブシニアの夢の釣り方 【前編】
 人生100年時代。介護などを必要としない日本人の健康寿命は女性75歳、男性72歳と飛躍的に伸びてきた。そんな中、自己実現の夢にチャレンジしようとするアクティブシニアが増えている。ここで紹介する「循環式ライフスタイル(住まいをお互いに交換し合って新たな地を巡る旅)」もそのひとつ。しかし、収入や体力も現役時代に劣る環境下で、新たな夢のチャレンジなど非現実的と尻込みする御仁が多いかもしれない。ここで思い出していただきたいのが、それぞれ現役時代に活用した「ノウハウ」だ。

 私はニュース・プロデューサーを生業としてきたが、夢の具現化もニュース・スクープの獲得も魚釣りのようなものだと思っている。ただ私の魚釣りは「釣った魚のシーン(の想像)」から始まる。次にしなった竿の手元を体で感じながら現実の足場を固めていく。捕らぬ狸の皮算用という諺があるが、私の脳裏には成功したシーンしか存在しない。そして最後までギブアップしない。もちろんイメージを描くだけでなく忍耐力と努力と運を必要とするが、一番強調したいのは潜在能力の援用だ。そう、火事場の底力! 追い詰められた時の瞬発力は何ものにも勝る。テコの原理でその力をうまく利用し大きな石を動かすのだ。

 取材例からみてみよう。1978年、中米エルサルバドルで邦人誘拐事件が発生。インシンカ社の社長、専務が都市ゲリラ、全国抵抗武装軍(FARN)に次々と誘拐された。この取材で目標としたシーンはFARNの最高幹部との単独インタビュー。だが、日本大使がアメリカから防弾仕様の車を取り寄せ、毎日ルートを変えて公邸と大使館を往復している状況下で、目に見えない相手にどう連絡を取ってインタビューの意向を伝えればよいのか。その回答は、私からゲリラは見えないが、ゲリラは私を見ることができるということーーー。
エルサルバドル邦人誘拐犯、都市ゲリラ(FARN)幹部との筆者インタビュー

 具体的には地元紙主幹でロイター記者を兼任するロベルト・アルダニャさんとの共同取材であった。ゲリラは声明文を市中のレストランのテーブルの下に貼り付け、電話でマスコミに知らせるのを常としていた。そこに目をつけ地元ラジオ局に張り込んだ。待つこと10日ばかり、オペレーターは震える手で受話器を差し出した。開口一番「松本社長は無事か?」との私の問いに対し、一瞬の沈黙があって「無事だ」と答えガチャンと受話器を切った。この模様は録音されていて日本全国に流された。アルダニャ記者も、翌朝一面トップで取り上げた。私の存在がゲリラ側に伝わった瞬間でもある。その時から街を歩いていてもゲリラの視線を否が応でも浴びることになり、私の潜在能力はフル回転し始めた。

 次にゲリラ掃討作戦のあった首都近郊の農村取材にチャレンジした。ところが出発前日、途中の道路に地雷が敷設されている、との情報が入った。一瞬迷ったが「車輪跡をなぞって進行しては」とのアルダニャ記者の提案を受け入れることにした。実際、車が通った形跡のない道路は随所にあったが、遠くから石を放り投げて安全を確保しながら、無事取材を終えることができた。アルダニャ記者は朝刊トップで取り上げ、同行した日本人記者が全国抵抗武装軍とのインタビューを希望していると報じた。しかし事態は急転し、松本社長が遺体となって発見された。単独インタビューが実現したのは、それからしばらく経ってからのことであった。覆面をしたシエンフェゴ幹部が「松本社長は、政府軍との交戦中流れ弾にあたって死亡した」とおもむろに語ったのを、今でもはっきり覚えている。

 このように未来のゴールを出発点として現在の立ち位置を逆算していく手法は、バックキャスティングと呼ばれ人間の主体的な願いや夢が織り込まれる。これに対し過去のデータや統計に基づく自然科学的な手法からは、常識を踏襲した未来像しか生まれない。私の場合、戦後活躍した国際ジャーナリストで「信念の魔術」の著者、クロード•ブリストルからバックキャスティング的手法を学び、特派員時代にはANN賞を何回も手にしたが、思えば日本には古来から神仏に願いを託す「祈願」という慣習があるように、我々は生来、未来志向型ではないだろうか。完結シーンが定まり潜在能力に火をつければ夢はきっと成就する。


「循環式ライフスタイル」についての詳細は、教育NPO法人ライブフォーラム のWebサイトをご覧ください
 
プロフィール 木村正弘 メキシコ大学経済学部講師、共同通信社メキシコ通信員を経て1978年テレビ朝日入社。テレビ朝日中南米支局長(1978年~1987年)、本社外報部デスク、CNN番組担当プロデューサー、ロサンゼルス支局長(バルセロナ支局長兼任)を最後に1991年独立。報道・教育専門のプロダクション「ジャパン・インターナショナル・ネットワーク(JINet)」を創設。現在、教育NPO法人ライブフォーラム代表。著書「鎖国とシルバーロード」、「環太平洋価格革命」など

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