Vol.85 こんなとき、どうする?「日本に本帰国して、アメリカ在住の母を日本に呼び寄せたい。③認知症が悪化」
高齢になり、たとえ介護が必要になっても「安心で安全な暮らしをしたい」。そう思うのは当然のこと。アメリカで暮らしていて、高齢になり介護が必要になったとしても、食べなれた日本食や日本語での会話ができる生活を続けたい。そんな思いから日本へ本帰国する人も増えています。今回はアメリカ在住のお母様を日本の老人ホームに入居させてあげたいとの想いで、先に息子さんが日本に本帰国。1年かけて環境を整え、いよいよお母様が日本に本帰国したケースを基に、実際にどのようなことが起こったのか、3回シリーズの最終話をご紹介します。アメリカからお母様が本帰国。行政手続き完了。
入居予定の老人ホームも決めたけれど。
Aさん(息子さん:40代)はニューヨーク在住30年以上。お母様を日本の老人ホーム(以下、ホームと表記)に入居させてあげたいとの思いで1年前に先に息子さんが日本に本帰国して、各種環境を整え、いよいよお母様が日本へ本帰国しました。お母様が日本で暮らすための行政関連や銀行などの各種申請などが完了。入居予定のホームの手続きも進み、あとはお母様がホームに入居するだけの状態を作り上げました。ここで思わぬことが起こりました。お母様に「リロケーションダメージ」の症状が現れたのです。リロケーションダメージとは、高齢者が引っ越しやホーム入居などの急な環境変化により、強いストレスがかかり心身に不調が現れることです。特に認知症疾患の人は新しい環境に慣れるのが難しいため、混乱や不安などが増大して認知症の症状が悪化することがあります。「ここは私の家じゃない!」と思い、帰宅願望が強くなることも。Aさんのお母様も同様の症状が現れ、ちょっと目を離すと一人で外に出て迷子になり警察のお世話になったり、昼夜反転して昼は寝て、夜は起きて行動するなど、ご家族も疲れ果てお母様の対応を家族だけでするのは無理と判断して、しばらく病院に入院してもらうことになりました。
お母様は病院に入院。
「帰宅願望」が強く、退院までに時間を要する状態に。
急な環境変化によって「リロケーションダメージ」を受けたお母様。その後、認知症の症状が安定するようにと思い入院してもらったけれど、「帰宅願望」が強く出て、なかなか落ち着かない状態が続いています。お母様の立場になって考えてみると帰宅願望が強く出るのは当然のことと思えます。40年以上アメリカのマイアミでお姉様ご家族と一緒に暮らしていたお母様。普段は主に英語を使い、マイアミという土地柄スペイン語も使って生活されていた。それがいきなり日本に本帰国したことにより日本語しか通じない環境にやってきた。街の様子も広大なアメリカとは違い、小さな島国ニッポンは道も家も街全体が狭くて小さい。ましてや、入院した病室は真っ白で無機質な部屋。病院では日本語しか通じない。突然このような環境になると「ここは私がいるところではない。」「自分の家に帰りたい。」と不安や混乱が生じてしまい、なかなかお母様の状態は落ち着かず、退院の目途が立ちません。よって、ホーム入居もできず、今はお母様の認知症状が落ち着き、一日も早く退院できるように新たな取り組みをスタートさせています。その一例は、英語を使えるボランティアスタッフに定期的に病院へ訪問してもらう。病室のサインを英語表記にする。お母様が大好きだったニューヨークでの暮らしを思い出してもらうため、その当時の写真を病室に飾り、好きな英語の音楽を流すなど、様々な対応を進めています。

海外で長く生活された方は日本に本帰国すると「逆カルチャーショック」を受けるケースが多々あります。日本の独特な社会ルールや人との付き合い方などに馴染めないことも。私達はこのような海外在住の方のお気持ちが分かることが強みだと思っています。あなたの「悩みや不安を安心に変えて」心穏やかに暮らせるように専門家とチームを組んで一緒に前に進んでまいりましょう。
ひとくちメモ ~私の母87歳~ No.85
「母と娘のちょうどよい距離感」の巻
私の母スミちゃん87歳。今は母とちょうどよい距離感を保っている。先日母からLINEが届いた。「地元の友達がお野菜を送ってくれたから取りに来てくれる?」。仕事が立て込んでいたけれど、「たまには母の様子を見にいこうかな」と自転車を走らせて母の家に行った。すると、里芋、新玉ねぎ、ほうれん草など。新鮮なお野菜を袋詰めして用意してくれていた。その後、母の家を出て振り向くと、出窓からニコニコしながら手を振っている母の姿が見えた。なんかいいなぁ、こういうの。いつまで母の笑顔を見ることができるのかなぁと思いつつ自転車を走らせた。(続く)
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