Whale Watching 2019

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日刊サンはロサンゼルスの日本語新聞です。 記事は毎日更新、求人、クラシファイドは毎週木曜5時更新。

第8回 ポエム・タウン

<成人の部>


その瞬間  平田ミチ


その瞬間、すべてが止まった
動く物すべてが止まった
光と闇の交差した青の世界
このファンタジックな光景に陶酔しながら
私は舞う
その瞬間、すべてが変わった
流れの時がすべて変わった
過去と未来の交差した白の世界
この無意味な光景に響く心の高鳴り
サイレンの音、人の声
“生きてますか”

約束の柿  フィツジェラルド・ナヲ


太ってまあるい
柿たちが
北加の秋を
全身にまとい
飛んで来た
純白のうす衣を
羽織って・・・
数日続いた
冷たい雨に
私の心も家も
暗かったのに
ぱっと
明るくなった
きらきら輝やく
柿たちと
「去年のお約束」の
短い添文に・・・。

記憶のブーケ  内 アリス


花の香りと
陽射しと影が
季節のうつろいを知らしめる
ただ
君の面影だけが変わらない

走り去る夕映えに
今日の日のことすら
思い出せずにいるのに
君のこと
君のすべてはこんなにも鮮やかで
それはまるで記憶のブーケ

思い出のひとつひとつを
リボンで束ね
真っ白なレースでつつみ
ため息が出るほどそっと
たずさえている

深く根を張れるはずもなく
種もこぼれず
それなのに
切りたての瑞々しさのまま
咲き続ける色とりどりの花

季節を語らず香る君の記憶は
雑多な心の中にあって
さわやかに咲く
そして
いつ枯れるとも知らぬ
不安をもってさらに
輝きを増す

神様に逢いに行こうよ!  平 凡人


トビウオさん
何時から君は
飛ぶように

大きな尾ひれや
胸びれを

神様から貰ったの?

海面すれすれに
飛ぶときは
どんなに気持ちが
良い事か

風を切り 波を越え!!!!

ネエ!

神様にお願いしてよ!!!

ボクにも”天使の翼”
授けて欲しいと言う事を

そしたら君と
水平線の彼方まで。。。

イヤイヤ空の上までも
昇り昇りて天に行き

神様に逢いたいね!!!

ペルー産の薩摩蜜柑  古田和子


八月に薩摩蜜柑を売っていた
そばに行って手に取ると
紫のレッテルで一個一個に
プロダクトオブペルーとあった
ペルーは今八月が冬なんだ

そのみかんを食べてみると
アメリカ産のサツマミカンよりも
ずっと日本の蜜柑らしい
昔のみかんの味がした

育てたのは日本の人だろう
昔の移民の家族だろうか
もう日本語を知らない
その子孫の三世か四世か

百年前にペルーに渡った人達は
石ころの荒地しか与えられず
食べるものも耕作できなかったのに
日本の政府は助けようとしなかった

戦争中はアメリカに連れて来られて
もしアメリカ人が日本にいたら
ペルーの日本人と交換で
連れ戻そうと計画された

天にも地にも見捨てられた
ペルー移民よ同胞よ
日本の薩摩蜜柑を植えて暮らし
輸出できるほどになったのか
ペルー産の薩摩蜜柑はおいしかった
そのやわらかい皮を捨てたくないほど
その蜜柑をいとしく思った

人生は波瀾万丈  山下さち


父親になぐられて育ちました。
バカ!バカ!と言われ続けました。
爪をかむ、癖がつきました。
「又、かんでる」
と頭をひどくこずかれる毎日でした。
親の言葉通り愚かな者になりました。
ところが、
結婚した相手は忍耐強く、
けっして人をおとしめません。
障害ある子にもやさしいです。
もちろんぶたれたこともありません。
今では、爪切りが必要になりました。
尊敬出来る人とくらせるのは、
神様のお恵みです。

私(わたし)  石口 玲


生まれた時も、七〇になった今も
わたしは私

気短かで、カッカと怒り、スッと冷める
ゲラゲラと大声で笑う
単純な私

ロスに来て三六年
嬉しい事、悲しいこと、悔しかった事
いっぱい、いっぱい有ったけど、
私はいつも私

でも此の頃少し違う
情に触れると私の琴線がピーンと張って
涙腺がポロリとゆるむ
小さな小さな出来事に感動して
生きてるってイイナ、と思う

それでもやっぱり気短かでカッカと怒り
スッと冷めて
大声で笑う

やっぱり、いくつになっても
私は・・・・私

わたしの郷愁  マキ・ヨシダ


遠くの電線が熱さでゆれる

それにまとわりつくように
ぶよぶよ膨らむ重たい空気

真っ直ぐに飛べない鳥たち

ああ、もうこんな暑いところ
私ぜったいに住めないよ

そう思っていたのに

緑ゆたかに光輝き辺りを揺らす田んぼを目にし
蝉の大音量がいっせいに聞こえてくると

どうしてこんなにも
私の胸は懐かしさではりさけそうになるのだろうよ

発見  グレイス中尾


見失ってしまった折れた針を探して
そこら中を這いずりまわる
磁石 懐中電灯 セロテープ
虫眼鏡を動員し
あらゆる手を尽くしても
見つからない
見つけられない

もう方法がないので座り込む

あの針さえ見つかったら
もうなんにも要らない
家人が誰も帰って来ないうちに
とにかく見つけなくてはならない
小さな危険物

再び目をサラにして探し回り
ついに見つけた!
見つかった!
恐れと焦りがみな溶けて
大きなものを手に入れた時に勝る
喜びが心に走る

一つの恐れが全身を縮め
一つの安堵が
全身を広げることを知った午後

窓を開けて
両手いっぱいに涼風を迎え入れた

盆踊り  若林道枝


楽しい死に方は
明るい生き方の尻尾にあるのか
顔を背けないで
誰もが行った未知を
洪水としてでなく
嵐としてでなく
またやってくる
ほんの微かな季節の節目として
戸を開けて
入れた風と同じように
出て行く風になる

母よ

最後まで
人を笑わせようと盆踊りの真似を
病院のベッドでして見せた
孫たちは歓声をあげて
オバアサンが手を枕の下に突っ込むのを
そして引きずり出した財布の
見覚えのある色に
思わず笑う

私が母であった時
三度母であった時
命の圧倒的な重さに軽さに
あの日から堅く顎を噛みしめて
死は拒むものでしかなかった

母よ

大笑いの残りが
頬に残り
盆踊りの手振りがシーツに残り
花は飾られ
花は飾られ

母よ

あなたは楽しく死んだ

風景  みちこ


白黒の風景が広がる

錯覚?

光りある色彩世界に住んでいると思っていたのに
色がない

「人は鏡」というけれど・・・

心の隙間を狙うがごとく
風景も鏡になってしまうのだろうか

パーキンソン病の友が
電話の向こうで、
震える声で、
「Final Exit」の本が欲しいと言った
わざと笑いながら
友の名を呼び
そんなの探せないと答えた

白黒の感情が走る

ソーッと見上げた目の前に
Golden Chain Treeの
緑と黄の鮮やかな色があった

光りが斜めに走っていた

ひとり  宝井 景


背負うものがあるから耐えられる
小さな幸せすら踏みにじって進む
「幸せか?」と聞けれたら迷わずそうだと頷く。

信じて。信じているから

鳩尾抉られる様な背筋が凍る時間
ひとりきりじゃないよる
会えなかった日
記憶がない朝方
動ごかずにじっ、と様子を伺う
弾ける、バラバラになる

的を得ぬ答え
捻り出した言い訳
苦し紛れの嘘
昨日に身を焦がす

「滑稽だね」と、誰か嘲笑えば良い

もし少しでも私を思い出すことがあるなら、本当に報われる

この先に何がある
私の望みは何時叶う

此処で終われるなら
誰の記憶にも残さないで

それから、あの人たちがどうかしあわせで在ってと
そう願うのに


選者のことば

『約束の柿』フィツジェラルド・ナヲさん。柿たちが飛んでくる様子を爽やかに描出しています。柿たちのお蔭で、私の心も家も明るくなった。最後はもうひとひねりしてください。

『記憶のブーケ』内 アリスさん。花と君の思い出を記憶のブーケで語ります。リボンとレースで飾り立てて、根もなく種もなく瑞々しく咲く花。「季節を語らず香る君の記憶は」。この一行が効いています。

『その瞬間』平田ミチさん。一行目の「瞬間」と六行目の「瞬間」は、後に続く文に説得力を与えています。結びの「生きていますか」は推敲してください。

『神様に逢いに行こうよ!』平 凡人さん。夢のある詩です。トビウオを題材にしているのも面白いです。純粋な心が伺われます。

『ペルー産の薩摩蜜柑』古田和子さん。ペルー産の薩摩蜜柑を食べてみると、アメリカ産の薩摩蜜柑よりもおいしかった。そこで作者は想像力をふくらませます。最後の二行がたおやかな優しさを感じさせます。

『人生は波瀾万丈』山下さちさん。つらい幼少期を過ごした後で、優しく尊敬のできる配偶者と巡り会えて良かったですね。神様のお恵みだと思いました。

『私(わたし)』石口 玲さん。最近の感慨にふける詩を綴っています。面白く手際よくまとめています。「やっぱり、いくつになっても 私は・・・・私」。結びもよろしいです。

『風景』みちこさん。最初七行が極めてよろしいです。「白黒の感情が走る」が良く効いています。詩の結末を工夫されるとよいでしょう。

『ひとり』宝井 景さん。心の葛藤を描いたやや難解な詩です。雑草のような強さを感じさせられました。「滑稽だね」と、誰かが嘲笑えばよい。から一変します。語彙を慎重に選ばれるとよいでしょう。久しぶりに秀逸な現代詩を読ませていただきました

『盆踊り』若林道枝さん。書き出しの二行が光っています。母がベッドの上で盆踊りの真似を見せた後で、状況と回想を巡らします。「母よ あなたは楽しく死んだ」。お母様の笑顔を感じました。

『発見』グレイス中尾さん。針を見失ってしまったことで、心が動揺します。「恐れと焦りがみな溶けて」から以降、感性を結集した巧みな文になっています。この詩も秀作です。

『わたしの故郷』マキ・ヨシダさん。わたしの故郷を再発見した感動が、じんわりと伝わってきました。書き出しも良く、構成もしっかりとしています。今後の作品に期待しています。

(新井雅之)

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