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日刊サンはロサンゼルスの日本語新聞です。 記事は毎日更新、求人、クラシファイドは毎週木曜5時更新。

第6回 ポエム・タウン

<成人の部>


私は誰  平田ミチ


仮面をつけ道化師の様に

おどけている私は誰。

仮面を引きちぎり己の化身に

おののく私は誰。
仮面をたたきつけ孤独の刃に

傷つく私は誰。

仮面を抱きしめ我子のぬくもりに

涙する私は誰。

今、私は闇の中

誰も何も見えはしない。

おどける私もおののく私も

今、私は闇の中

私も何も見えはしない。

傷つく私も涙する私も

そして仮面さえも。

有難う  井上三重


うまいもの、作ってくれて
ありがとう
つらいとき、話してくれて
ありがとう
忘れ物、届けてくれて
ありがとう
雨が降り、庭の芝生も
ありがとう
素直にいおう、
言葉に出して、
有気を出して、
今すぐいおう、明日といわずに。
愛をこめた言葉は人の心を温める。

ニューヨークの夜  シマダ マサコ


零下の深夜

クライスラー
ビルディングのタワーの明かりは
闇に冷たくひかり

眠れぬ旅人のこころを癒す
午前二時

ひかり輝く貝殻を
積み重ねたとんがり帽子の屋根の
背後から

見よ

半月が浮かびあがる

そんな筈はない
疲れた瞳のいたずらか

幻影であればあれ

記憶せよ
記憶せよ眼球の底に
この華麗さを

午前六時薄れゆく闇
タワーの明かりは音もなく消え

四十九階の部屋から見下ろす地上に
今日が始まる

昨日のように
明日のようにふたたび

今年の春  古田和子


「自分が死んだら」ああしなさい
「自分が死んだら」こうしなさいと
何かにつけて聞かされている

私はそれだけ強くなり
彼は弱っていくようだ
あんなに何でも自分を押し通した人が
今は私の言う事を素直にきいたりする

私たちはこの歳でまだ仕事をしている
息ぴったりのチームなのだ
いつまで一緒に暮せるのかという
心の隅にこびりつく緊張のせいで
私はこの頃
一つことが落ち着いて出来ない

だから今日の午後
郵便局まで歩いてこようと
玄関を出た時は
少しいらいら怒っていた

でも、時は春
思いがけないところで
櫻の花に出会ったりする
去年よりも一層美しい
比べるものの無いその姿

木々の新芽の若緑を
蒼い空に仰いで
家に帰りつく頃には
神様が下さった
なんて素晴らしい今年の春
ということ以外
何も頭に無くなっていた

風の表情  若林道枝


急に風はでてくる
耳を澄ませても
窓にしがみついて見張っていても
風が生まれる瞬間は
捉えたことがない

風の口は捉えられないが
風の出口も捉えられない
窓がむせび泣くように
夜中に始まった喘息のように
いつの間にかそこにいる
また急に木々は揺れるのを止め
花は復讐を遂げた戦士のように
立つ

何かを探しにくるんだよと
おまえはいった
あんなにどこへでも入り込んで
何かを探しているんだよ
そうかねえ
ほら 私たちが真っ白な壁に残してきた
へのへのもへの

記憶のかなたにある
なんの意味もない落書きを
年老いた風は探しにきたんだよ

伸びすぎたジャスミンの枝のように
なんの意味もない
つるニハののムし
塀に忘れられ

撮る・ 自然の中で  石口 玲


私は写真を撮る事が好きだ
卒業以来もう五十年もやっている
でも難しい
撮るってことは撮る以前の事が問題なのだ
何を言いたいのか、何色にしたいのか
形あるものなのか、見えないものなのか
それが定まらないで撮ったものは、
やっぱり不安定な写真だ
自分の「情念」を
静止した写真の中に「動」として置きたい
風の動き、花の想い、お日様の優しさ
全てをくるむ自然の器
花が歌い、風が舞い、
私は自然の中の自分の座布団を探す
天を仰ぎ、まぶしさの中で眠気を覚える
ユッタリとした時間が流れる
目を閉じる
遠い昔の思い出と、
近くで、遠くで聞こえる鳥の声
撮影を忘れ、幽玄と平和の世界に浸る
至福の時間が流れる
自分は幸せ者だ、と思う
この時間と場所をくれる自然に
心から言いたい
「ありがとう」と・・・・

責務  中尾照代


後回しにはできない仕事を
早くやるようにと自分に強いる
疲れた心と身体をむちうつようにして
取りかかる

手を動かしてもなかなか進まない
夜がふけていく
周りは静かだ
私はなすべきことをしなくてはならない
今夜中に

外は晴れて月が出ているだろうか
星はいくつも見えているだろうか
明日は寒くなるだろうか
思いはあれこれ無用に動きまわり
なすべき仕事に入り込んで来て
少しもはかどらない
とにかく早くしなくては

フリーウエイは混んでいたなあ
あそこの通りは散らかっていた
あの店の前に咲いていた紫色の花は、、、
またも雑念が走り回る

さあ早く仕事をやってしまえ
自分の責務をきちんと果たせ

ため息混じりにちらりと見た時計が
冷酷な眼差しでじっとこちらを睨んでいた

足跡・・・存在とは?  平 凡人


フッと振り返ると 足跡が 5—6歩

私について来る

素足でそぞろあるきの 砂の浜を

紛れなく あれは  “過去”

見ている私は    “現在”

踏み出す一歩は  “未来”

不思議だ!!

見える筈の無い“過去”が現存している
そして跡を記しえぬ“未来”までも
“現在”の私と共に、今、この浜辺に

この世とは

見ている過去は現在で
現在の私は過去と成りつつ
既に未来と言う存在なのだろうか

答えが欲しい !!!

私は

逝きし者か  今ある者か
それとも真近き者なのか


選者のことば

「『私は誰』平田ミチさん。感動しました。仮面をつけた道化師のように、状況の変化に、あるいは心境の変化に、巧みな表現によって綴られています。秀逸な詩です。

『有難う』井上三重さん。素直な詩です。心温まる詩です。説得力があります。

『ニューヨークの夜』シマダ マサコさん。状況が目に浮かぶようです。詩の中へと吸い込まれそうになります。テクニックを要する詩です。

『今年の春』古田和子さん。自分の複雑な思いを吐露して外に出たら、春の息吹が感じられる。素晴らしい今年の春。詩の前半と後半を対比させて、読者を引きつける詩に完成させました。

『風の表情』若林道枝さん。窓と風の対比に始まって、風の表情を巧みな比喩を用いて展開していきます。「花は復讐を遂げた戦士のように立つ」と最終連は、みごとな表白です。高度なテクニックが用いられた詩です。

『撮る・自然の中で』石口 玲さん。「撮るってことは撮る以前の事が問題なのだ」、「私は自然の中で自分の座布団を探す」。この二つの表現が光っています。ゆったりと時の流れを感じる詩です。

『責務』中尾照代さん。焦っても、焦っても、なかなか仕事がはかどらない。作者の気持ちが分かります。最後の二行が効果的です。

『足跡・・・存在とは?』平 凡人さん。足跡に見る過去、現在、未来の不思議。やがてこの世について考える。読後感は考えさせられました。「逝きし者か 今ある者か それとも真近き者なのか」。余韻を残す結末に、再び考えさせられました。

(新井雅之)

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