Nikkan SAN

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日刊サンはロサンゼルスの日本語新聞です。 記事は毎日更新、求人、クラシファイドは毎週木曜5時更新。

第19回 ポエム・タウン

<成人の部>


再会(2)  シマダ マサコ


再び訪れる

あなたのためではなく
わたしのためと知りながら

空は今日も青い
夏の波はひかりにかがやく

あなたの遺灰はとまどうように
それから
ゆっくりと落ちていった

あの遺灰はもはや
ここにない

海流に乗って
何処へ行ったのだろう

わたしの遺灰を待たずに

わがひと世  神野豊子


折々を
花を咲かせる
四季はある

誰に断るでもなくて
地より芽吹きて
花をつけ 実を結び
われを呼ぶ

こうして 日ごとは
一年の時をきざみ
足跡を
自然のいとなみ
たやすからず

われの この一世も
巡りいる 四季のごと
いとなみつづく

永遠の夫と生き来て
四季の終わりを
告げている
いま暖かく
冬眠の日 思う

水色の花瓶  フィッツジェラルド・ナヲ


赤いリボンに結ばれた
赤い花束とキャンドル
そして
ハート型の窓が開いて
それはそれは
美しい水色の花瓶
この窓から
この花瓶を下さった
あなたの声が
聞こえてきます
そして
あなたが何時も
歌っていたあの日の歌が
聞こえてきます
遠い遠い所から…。

風が流れて  内 アリス


風が流れて
マツバボタンの原色が
大地を染め

友が逝って
風が流れて
母の好きだったコスモスが
乱れ咲いた
追憶は悲しく澄み
ひしめく合う虫の音は
夜毎 よごとに人の世の哀歌を奏で

ああ風が
雲が
時が流れて
どっぷりと今は

伸び切ったゴム輪が  若林道枝


伸び伸びる切ったゴム輪が
ぼろぼろと
ページの間から
こぼれる
時と時代を区切って
しっかりと区分けして
長い眠りについていた箱の中で
ゴム輪がボロボロになって
もう
曖昧になった時代は
溶け合って
箱も蔵で溶け合って

老いた人とは
誰がどうきめるのか
503号の女には
時々這うような腰痛が戻って来る
504号の女は
時々捻じれる記憶の辻の真ん中に
立ち止まる

いつまでも座り込んでいる
鳥たちの集まる池の辺で
パン屑を投げる口笛と一緒に
もう忘れてしまった部屋番号と一緒に
もう去った妻と一緒に
肩にはもう立ち込めない
明日は何時までもあすであり


石を投げる力はある
石は微かな力を得て鳥となり
鳥は水を打ち
ただよう地上の枯葉を
地に止める
記憶はなくても
葉は流れる
503号と504号の谷間で
葉は流れる

夜半過ぎ  黒川彩歌


夜空の下、小さな杯に君の瞳が浮かんでいた
君はまだ幼くてチャンバラの木の棒を
降りかざし生きていた
忘れたのは声だけだった

漆黒に点在する無数の輝きが
空に存在する命なのだと
老齢の嗄れた声が
むかし説明していたのを思い出し
小さな四畳半、片隅の灯りを消しながら
窓の外の標本
空の輝き、眼差しを全部預けていた
それは輝きを全て捨てていた二十歳の夜
地球上の命が呼応して、更に
輝きは増すのだと見えない老人は
話を止めないで繰り返す
映る人には映るのだという
儚く美しく、失った自身
柔く孤独に、得た犠牲
哀しさと優しさの欲望

どうか夜空の哀しみだけは歌わないで
この空を見ることでしか生きられなかった
日もあったのだから
星に吹かれて出来た川を
網で掬いたかった鉛色の雲
コンビニの自動ドア越しの満月
ピアノの音色が溶けた新月
名前の知らない山を超えた流星群

どこかで罵倒が行き交い平和を
捨てようと思惑されている
どこかの戦争を得てこの星空は輝きを
更に増したらしい
老人は語りを止めない
〝魂が還っていったのだ〟
〝愛する人をすぐ側で見れる場所に〟

チャンバラ、老人、
それは
幼い頃、生き着いてすぐに捨てた街
何日間かの赤ん坊でいた、あの平和


選者のことば

盛夏の術後から体調がすぐれません。かれこれ、七年以上も闘病生活の身ですから、一進一退で予断を許さない状況がつづいています。これも吾が人生と言い聞かせながら、精一杯生きぬくしかないのです。
さて、詩の応募状況ですが、今回も「青少年」の応募が届いていません。寂しいです! 「成人の部」は、個性の強い作品を受け取りました。嬉しい限りです!

『再会(2)』シマダ マサコさん。状況が目に浮かぶようです。心に投影されたうら哀しさが見えます。最後の一行は作品全体の余韻を最大限に引き上げてくれます。

『わがひと世』神野豊子さん。連句を読んでいるような気になりました。前半は常套です。最終連はよく描けています。

『風が流れて』内 アリスさん。「追憶は悲しく澄み」の表白は巧みですが、次の行の「ひしめく合う」は、表現をかえてみてください。結びの「どっぷりと今は 秋」は、とても効果的です。

『水色の花瓶』フィツジェラルド・ナヲさん。メルヘンとたわやかさを感じる作品です。結びは言辞を選んでください。

『伸び切ったゴム輪が』若林道枝さん。一連目は、至妙な言葉の組み立てが功を奏しています。二連目は斬新な発想のもとで、503号の女は504号の女の記憶に巻き込まれていきます。3連目以降は健忘をテーマに展開していきます。このように理解すると、タイトルが活き活きとして、この作品の魅力をとらえた境地にいざなわれていきます。

『夜半過ぎ』黒川彩歌さん。前半は奇警な業を感取しました。作品の中へと吸い込まれてしまいそうです。三連目の、「満月」、「新月」、「流星群」が、この詩文のバランスを崩しています。最後の連も推敲が必要です。これだけ達者な詩が書ける方ですから、次回も期待したいです。

(新井雅之)

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