Nikkan SAN

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日刊サンはロサンゼルスの日本語新聞です。 記事は毎日更新、求人、クラシファイドは毎週木曜5時更新。

第16回 ポエム・タウン

<成人の部>


浮かばない日は  古賀由美子


真っ白なページが攻めたてる
さぁ何か書きなさい書きたいんでしょ

う~~んちょっと待って

脳をノックしてみる
返事は「ただいま何も入っていません」
OH!NO!なんということ

今度は心の扉をノックしてみる
返事は「悪いけど感動することが何もないの」
OH!NO!なんということ

そういうわけで
私の脳はこっぺぱん
私の心は無味乾燥
白いノートは憎たらしいほど白いまま

しかたないので
庭の雑草抜きに行ってきます

「助けて下さい」  山下さち


風が吹く
車を運転していて、
赤信号で止まる度
両手でカードボードを向ける人

男の人も女の人も
顔がうす汚れ、服はボロボロ。

どの様に
暮らして来たのですか?
楽しかったのですか?
笑って、買物ばかりしたのですか?
人生は複雑ですね。
暖かい、お風呂に入れます様に
お腹、いっぱい食事が
与えられます様に。
綺麗なシーツの上で
ぐっすり眠れる日が
必ず、来ます様に。

田舎町駅前  古田和子


電車は三十分に一度だけ
駅の前には空っぽのバスが一台

行き先表示は緑の電気で
ハッピーホリデイス
とそこだけ光っている

運転手はいない
乗客もいない

薄暗くなりかけた遅い午後
ハッピーホリデイス
だけが光っている

北原白秋ならこのバスを
淋しいバス
哀しいバスと
詠うだろう

私にはこの風景は
淋しくもない
哀しくもない

ここはアメリカの田舎町
空っぽのバスが一台
時間が来るのを待っている
それだけのことなんだ

背の高い街路樹から
はらはらと降りやまない
秋の葉が道を汚す
いつもの夕方が来ようとしている

「愛の基(もと) ~Love in the base~」  紗咲愛美


気付いたら 私はここにいた
今年も涙で始まった誕生日
毎年叶う事ない 私の願い

繰り返される涙の中で
今年はあなたが届けてくれた

見返りを求めずともあなたがくれる
そのメロディは 近くて遠い

心に寄り添う孤独の音
その怖さを 私が溶かしてあげたい
覚悟してて ウザい程の温もりを


気付いたら あなたでいっぱいだった
今年も独りで迎えるクリスマス
毎年願い続ける 同じプレゼント

無理にかき消す叫びの外に
今年はあなたが届けてくれた

見返りを求めずともあなたがくれる
そのメロディは 遠くて近い

心に沁み入る優しい音
その弱さを支え 抱きしめてあげたい
覚悟してて 面倒くさい愛情を

うっすらと  シマダ マサコ


彼はわらう

うっすらと

ひとりでわらう

はにかみの
わらい

あれは
はじめて会ったころ

のうぶなわらい

それから五十年あまり
あのわらいは消えて

いまになって
彼は

うっすらとわらう

なにを思い出して
いるのだろう

死ぬまぎわに

夏の花   フィツジェラルド・ナヲ


涙を見たのは
始めての事でした
詩人原民喜氏の
小説「夏の花」を
読んで居る
あなたの…
うす紅色の
頬を伝わって
落ちた数十滴
真珠のようでした
出来るなら
取って置きたかった
あなたの
美しい涙を

凍った雲の上に  内 アリス


子供の頃 兄と二人きり
冬の越後に旅した
母の反対を尻目に
常ならば車のところ
なぜか汽車で

ガタコン ガタコンと音をたて
ゆっくり流れる車窓の風景は
輪郭を失った真白の世界
時たま見かける人影は
砂糖にたかる蟻のよう
ただ黙々と
白いかたまりと格闘していた
おおよそ子供にはつまらぬ風景だった

雲が凍って落ちてきたものが
雪だと思っていた その頃のわたし
空を見上げた
視界いっぱいにひろがる雪の素
まだ まだ 降り続くのだと悟った
幼な心に
ああ なんて寂しい
なんて美しい所だろうと
焼きついて離れなかった
そして 兄はこの景色を
わたしに見せたかったのだと悟った

わたしは越後からロスアンゼルスへ
兄は雨のよくふるシヤトルに
折につれ
凍った雲の上を想い出す

のどかな朝  宇都湖畔


遠い日に
あなたと来た丘の上から
一人、マリブの海を見ています
満潮の海に人影はなく
群をはぐれたペリカンが一羽
ぷかりぷかり浮いている

雨上がりの丘は
朝日にキラキラ輝いて
自然現象なのか
行儀よく並んだ
ひまわりが三本
海に向って伸びている

ひまわりの咲く頃、又来よう

ペリカンの身を案じながら丘を下る


選者のことば

『浮かばない日は』古賀由美子さん。浮かばなかったので、この詩ができました。「私の脳はこっぺぱん」、会心の表現で生き生きとしています。「無味乾燥」は、表現を変えてみてください。

『助けて下さい』山下さちさん。三連目の五行までが、面白く良く描けています。思い切って、ホームレスの讃歌にしたらどのようになるだろうかと察しました。発想の転換も楽しいものです。

『田舎町駅前』古田和子さん。四連目までは幻想的なアニメのようで、となりのトトロの「ねこバス」を思い起こしました。「ハッピーホリディズ だけが光っている」。この表現が実に的確です。結びは、ひと工夫してください。

『愛の基~Love in the base~』紗咲愛美さん。最初は推敲不足と捉えましたが、三連目から引きつけられました。若い女性の溶けた心を見事に彩っています。そこには虚しさと切なさもありますが、少しばかりの憤りもあります。最後の「面倒くさい」は、この作品とそぐわないと思いました。言辞をもう一度考慮してみてください。

『うっすらと』シマダ マサコさん。わらうとわらいが六回も出てきます。彼のわらいは、うっすらと、はにかみ、うぶなと、あります。いずれも静かなわらいです。わらうがいけないというわけではないですが、彼はほほえむ、ほころぶ、微笑する、目を細くしてなど、使い分けるのも関心を深くします。

『夏の花』フィツジェラルド・ナヲさん。原 民喜の小説「夏の花」を読んでいるか、読んでいないかで読後の印象が違います。この小説は原爆体験記で心憂い物語です。淡々と一気に書き上げたように見えます。初めて見た涙の美しさが真珠のようでした。とてもまばゆい表白です。

『凍った雲の上に』内 アリスさん。兄と越後に旅をした追憶が描かれています。車窓の状況描写と幼いころの心象描写との対比が、実に巧みです。題のつけかたも結びも優れています。

『のどかな朝』宇都湖畔さん。一連目と二に連目はよく描かれています。最後の二行は、描出を変えてみてください。風を入れること(時間をかけて見直すこと)も大切です。

(新井雅之)

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