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第10回 ポエム・タウン

<成人の部>


爪切り  若林道枝


形見の爪切りで
切りそこなった角を注意して磨くと
きらきらと爪の角は光り
たちまちあなたは茫々と立ち現われ
昔の話をする

秋の花のように
咲き乍ら末枯れ
散り乍ら咲き
時は綾取りのようにたちまち縺れて
母さん
たちまちあなたは縮みながら広がり
愛より優しく
(ケ、と恥ずかしがるでしょう
 ケ、そんなむず痒いこの世にない言葉使うな)
とあっちを向いて

言葉より織り上がった布きれを撫でるように
あなたは
きらきらと光る爪の角にさわりにくる
そこで
私を包み
私をどこまでも
あなたはどこまでも
どこまでも
どこまでも

僅かな瞼の裏の隙間に
45度に広がるまつ毛の先にも
伸ばした手の届くまでにも
宇宙にも


どこまでも

待ちわびた太陽  中尾照代


太陽は
どこにもいなくなってしまったのだろうか
あるいはもう、この地を忘れたのだろうか
それとも
顔を失くしてしまったのだろうか
そう思えるような日々

空は雨もないのに一日中重く垂れ下がり
暗く寒々としたした日が続いて
すべてのものが力なく沈んでいた
指折り数えて丸6日
「太陽よ どうかここに戻って来て」と
懇願するように
誰もが暗い空を切なく見遣っていた

しかしついにこの朝
太陽は以前と変わらない輝く笑顔をもって
姿を現した
活力に満ちた両腕を広げてすべてのものを
招き寄せている

大空も風も大地も木々も家々も
小さな草花もみんな
我先にと輝く太陽に挨拶を済ませ
拍手しながらはしゃいでいる

私も急いでそれに倣い
心身に笑顔を取りもどした

息子  シマダ マサコ


わたしは姑を
おかあさん
と呼んだけれど

嫁はわたしを
おかあさんと呼ばない

呼び名の
違いに過ぎないのだろう

いずれにしても

母親は何時か
息子を失う

葉の落ちた樹ぎの梢を

今日も北風がゆく

母親失格  山下さち


私は子供を捨てました。
新しい母になった人は
私の子供をいじめました。
毎日「家を出て行け!」と
言いました。
私の子供は十歳でした。
私の子供は障害児でした。
昔の事として、子供が話して、
くれるのを聞きながら
私の心は泣きました。
かわいそうで、せつなくて泣きました。
自分がどんなに悪者か、
神様がお示し下さいました。
たとえ一年間であっても、
私は子供をすてた罪人です。

ムシカリ  内 アリス


ブナの芽吹きに先だち
ムシカリの木は枝先に
小さな五弁の花を集め
飾り花となったガクに守られ
白くく明るい開花で虫を呼ぶ
ほのかな匂に誘われ
枝をひき寄せる
それは
授乳時のややの匂と重なり
思いがけず遠い日の
乳の谷間に思いが走る
小さな両手で挟む乳
吸いつくくちびる
乳の出が鈍るとまた片方へと
誰に習ったわけでもないのに夢中で
母から娘へ
娘もやがて母となり
娘もやがて母となり
送り継がれる時のなか
細い血すじの通過点
光と影が織り出す いのちのみち

緑ふかまるブナの森
木洩れ陽を拾い
丸く大きくなるムシカリの葉
葉脈は くぼみ シワシワに
こんな葉が大好きな虫がかじる
葉は黙ってかじられている

晩夏のムシカリ
ブナの木蔭での営みは
目立つ眞赤な実を結び
鳥たちにつつかれ 呑み込まれ
新たな 旅立ちをする種子

未来を信じて  石口 玲


カレンダーがめくられた
一月になった
タダそれだけなのに
何と新鮮な気分になるものなのか
時間が経過し、今日になった、と言う事だけなのに
身も心も何か新鮮になる
去年のいやな事、悲しくつらい事は忘れ
良い事だけを思い出し
今年はきっと良い事が来るさ
といつも考える
時間は前にだけ進む
過ぎ去った過去の修復は出来ない
でも、未来には計画も希望も持てる
過去は自分の土台で大切だけど
過去にかかわっていたらいつもちっとも前に行けない
今日は寒かった、今日は強風だった、
でも明日は春のやわらかい風と
希望が吹いてくるさ
そう思うことにしよう
一月のカレンダーをめくり
新鮮な気持ちになったように
二月も、三月も四月も
いつもそう思って
いつもそう願って
私はカレンダーをめくる

あの日  フィツジェラルド・ナヲ


うす紅色の
灯火(ともしび)が
ついて
明るくなった
常夜灯
遥かなあの日が
優しく温く
顕ちました
穏やかな
微笑みが
近付き
そして消えました
綿菓子色の
雪が遠い国で
降って居ります


選者のことば

『爪切り』若林道枝さん。「茫々と立ち現われ」は、この詩に見合った鋭い表現です。申し分のない優れた作品です。結びの一語は推敲してください。いずれにしましても驚きの秀作です。

『待ちわびた太陽』中尾照代さん。一連目の完成度があまりにも高いです。二連目以降もこの調子で書いてください。

『息子』シマダ マサコさん。心の葛藤を描いた一瞬の思い。実に心象描写が上手いです。「母親は何時か/息子を失う」。五連目はかなり効いています。最後の二行も作者の思いを吐露しているかのようです。

『母親失格』山下さちさん。書き出しから度肝を抜かれました。綯い交ぜになった心情を淡々と語っていきます。結びも、「私は子供をすてた罪人です」。罪人になることは、おそらく懺悔の念なのでしょう。心が痛みます。

『未来を信じて』石口 玲さん。その気持ち分かります。カレンダーを題材に、心境の変化が面白く描かれています。「私はカレンダーをめくる」。会心の結びです。

『あの日』フィツジェラルド・ナヲさん。優しい思いに駆られました。灯火、優しく温く、綿菓子色の言葉をちりばめて、上手くまとめています。

『ムシカリ』内 アリスさん。ムシカリの開花の匂いを授乳時の匂いと重ねて、過去を巡らす回想に心がうたれました。二連目は巧みです。四連目と五連目は、もう少し整理が必要です。アリスさんでないと書けない力作です。

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