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第10回 ポエム・タウン

<成人の部 俳句区>


嶋 幸佑選   猫あくび障子に映る冬の午後   京乃一人琴

日刊サン賞   初もうでしだいに願いシンプルに   鈴木きよし

TJSラジオ選   椰子越えて雪山望む羅府景色   塚本 惠

ゲスト選者 ジョン金井選   借景の連山ひかる銀色に   詩月直竹

佳作   冬ざれてただ夕焼の野辺に落ち   野島弘子

佳作   寂びしさの吹き寄せてくる冬の浜   平 凡人

佳作   薄き紅もの尋いたげなシクラメン   麻生三晴


成人の部 選者のことば

回を追うごとに、選考が難しくなってきていると感じているのは、恐らく、私一人ではないだろう。一つの素材に、繰り返し取り組んでいる方がおられる。俳句ではなかなか使いこなせない言葉を使っている方もおられる。文語に慣れてきた方が増えてきてもいる。勉強の跡に違いない。ただ、総体的に注意していただきたいことがいくつかあることも確か。
その一つが、形容詞や副詞で感動を伝えようとしている傾向がみられること。「美しい」や「みごと」、あるいは「悲しい」など、作者は確かにそう感じたのだろうが、どう美しいのか、どうみごとなのか、具体的に示さないと、作者の感動が見えにくい。そのため、そういう言葉が浮いてしまいかねない。

「猫あくび―」。形容詞も副詞も使われていない。しかし、この句に、冬の午後の、幾分温かくなった日差しが感じられないだろうか。縁側で昼寝をしている猫。障子の向こう側にいて、日差しを受けながら欠伸をした。その様子を、部屋の中にいる作者が見ている。作者のくつろいだ気分が伝わってくる。実は最初、障子に映るのは猫が欠伸をしているところと解釈したのだが、何度か読んでいるうちに、冬の午後が障子に映るという解釈ができることに気づいた。すると、猫の欠伸によって、冬の午後を詠んだ一句となる。そう読むと「猫あくび」で切れが生じて、それに続く「障子に映る」との間に間ができる。その間で、猫が欠伸をしているのだ。おもしろい解釈ができる句である。

「寂しさの―」。この句の冬は、猫が欠伸をしている冬とは異質の冬だ。浜辺に佇み、吹き寄せる風を受けている作者。「寂しさ」と名詞にして、それが「吹き寄せてくる」としたことで、そこに、冬の肌を差すような風が吹いていることを感じさせる。寂しさの大きさが伝わる。

「冬ざれて―」。措辞から、冬の蕭条(しょうじょう)たるさまが目に見える。「薄き紅―」。これも、「もの尋いたげな」という措辞から、その紅の薄さが見える。ともに、視覚で訴えている。選には入らなかったが、「夫の背に気骨ひと文字冬帽子」の句は、俳歴の長さを感じさせる。「冬帽子」の季語が生きている。言うまでもなく、俳句は世界で最も短い形の詩。十七文字でいかに感動を伝えるか。一人で感極まっていても、感動は伝わらない。勉強を重ねるしかない。そして「多作多捨」ということだ。(嶋 幸佑)

「初もうで―」。年に一度の初もうでのお願いごと。子供の頃は、特別な気持ちで思ったまま希望一杯にお願いごとをしたものです。今では年齢と回数を重ねるごとに、だんだんと家族の健康や幸せなど、シンプルではあるが現実的で身近な幸せを願うというようなお願いごとに変わっていったという気持ちがよく分ります。(日刊サン)

「椰子越えて―」。毎日眺める景色を俳句で詠むと“いとをかし”、趣が出ますね。さまざまな人種が暮らす当地では季節も混合し、日本の四季とはまた違う良さがここにあると、この句で再認識しました。俳句は詠む楽しみとそれを味わう楽しみがありますが、シンプルだからこそ奥深い、この時期にピッタリな一句ですね。(TJSラジオ)

太平洋を隔てたアメリカに住みながら、思いを馳せるのはやはり日本のことのようです。除夜の鐘、初日の出、湯タンポ、鍋焼きうどん、ポチ袋。ふるさとを想う言葉が、応募作の中にふんだんに散りばめられていました。優秀作を選ぶにあたり、音を聞いてその情景が広がるということに留意しました。「借景の―」。冬になると戻ってくるロスの雪景色。ロスの北を屏風のように連なる山々は雪をかぶり、銀色に光りかがやく。借景という日本特有の美意識に引き入れて味わう温暖な大都会での冬景色。この地に住む幸運をあらためて感じさせてくれる秀作でした。(ゲスト選者・ジョン金井)


<青少年の部 俳句区>


嶋 幸佑選/ゲスト選者 ジョン金井選   該当なし

日刊サン選   雪だるま寒い外でもだいじょうぶ   白形小菊

TJSラジオ選   年越しの笑い収めは歌合戦   田中 澪

佳作   黙想で気持ち新たに初稽古   田中 澪


青少年の部 選者のことば

青少年の部への応募が少なかったが、最初はとにかく、素直に、感じたままを表現してください。それを五・七・五に当てはめる。たくさん作ることです。何でもかんでも五・七・五にしてみてください。雪だるまへの思いやりも句になっています。

「黙想で―」。黙想で始まる初稽古。柔道か剣道でしょうか。五・七・五と一緒に、頑張って稽古を続けてください。(嶋 幸佑)

「雪だるま―」。雪をかき集めて作られた雪だるま。雪が降らなければ存在出来ない雪だるま。雪だるまを作る私達人間は雪の中では、寒さに負けて長くはじっとしてられない。しかし雪だるまは、むしろ自分を作ってもらえたことに喜び、にっこりと満足げに、じっとしながら雪景色を眺めている、そんな姿が想像できます。(日刊サン)

「年越しの―」。年越しの楽しみのひとつが“歌合戦”。そこには笑いや感動があり、また一年を振り返るそんな時間が流れます。笑いで一年を収める事が出来たことは素晴らしく、また新年に向けて希望もふくらみますよね。一緒に歌って、笑って、また次の年越しも笑って迎えられますように!(TJSラジオ)

「五七五という十七文字の中に景色を描き、情感を盛り込むという文の形態はどこの国にもない究極の形だと思います。上にも書きましたが、音を聞いてその景色、情感が思い浮かぶということを選考の基準にしました。青少年の部にはその基準を満たす作品が見当たらず、残念ですが該当者なしとしました。次回でのご活躍を期待します。(ゲスト選者・ジョン金井)


<成人の部 日刊サン選「スポットライト俳句」>


駆け登る復興の日の出逆さ馬   ひで みつ

初夢やなぜ三茄子娘問う   勅使河原 薫

やはらかき初風にふと笑みこぼれ   古賀由美子

砂糖漬けカリンの香り会話止め   那智高雄

真白なる冬あじさいや凛として   金子ミツ江

白椿チラホラ咲いてる庭の隅   ステーィブ・トバ

独(ひとり)夜の鍋焼きうどん春遠し   チエコ・ウィルソン

除夜の鐘知恩の響きロスで聴く   生地公男

句の道も二人三脚去年今年   鈴木ロジー

新玉に祈るは一つ日々平和   榊原ふじゑ



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