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特集記事



JANMへ行こう!! vol.40 - 帝国主義の日本で教育を受けた日系人の体験を聞く


今月のボランティア
現在、JANM1階で開かれているハートマウンテン収容所の展覧会にて。後方の写真に写っている山がハートマウンテン。
トオル・イソベさん

トオル・イソベ 1926年、サンフランシスコ生まれ。日系二世。1928年、2歳で伯母夫婦と一緒に日本へ行き、日本で帝国主義の教育を受ける。1939年春にアメリカに帰国して、1942年にはワシントン州ハートマウンテンの収容所に送られる。郵便局で長年勤務し、引退後はJANMでボランティアを始める。



―イソベさんのご両親について聞かせてください。

父は静岡・歩兵第34連隊に所属していて中国・青島で任務に就いていました。日本に帰国後、1919年にオークランドにいた姉を頼ってアメリカに渡りました。伯母夫婦は花を育てていて、父は伯母の店で働きました。
1924年には新移民法が施行されるというので、父は急いで静岡に帰り、母と見合い結婚をしてアメリカに戻りました。そしてサンフランシスコに住んで、僕たち兄弟が生まれました。


―イソベさんは2歳から13歳まで日本で育ったそうですね。

父の姉の伯母夫婦は、早い頃にアメリカに出稼ぎに来て、事業が成功したので、僕を連れて日本へ帰国しました。伯母には子供がいなかったので、次男の僕を養子にするという話があったのだと思います。けれど結局、僕は養子にならなかったので、なぜ日本へ行ったのか未だに分かりません。
しばらくして妹、兄、弟の順番で、兄弟姉妹全員が日本に送られました。その時、兄は5歳で、再会した僕に英語で話かけてきたんですよ。(笑)
両親は、日本の教育は大切だと思っていたので、子供たちには日本で教育を受けさせたかったのです。当時の日系社会では、子供を日本へ送り教育を受けさせるのが習慣でした。だから二世の20%が帰米ですよ。
両親たち日系一世と私たち二世とでは、考え方が全く違います。両親たちの世代は、日本を一番に優先しましたし、アメリカ生まれの僕たち二世はそうではありません。 
1930年の日本は帝国主義で、これは間違っていると、僕は小さいながらに思いました。しかし僕の両親はそうは思いませんでした。特に父は元兵士だったので帝国主義に疑問など持たなかったかもしれません。


―2歳から日本で育ったので、日本の帝国主義に影響を受けたのではありませんか。

当時の日本の小学生たちは、帝国主義について「おかしいな」って感じていましたよ。私もおかしいなと思っていました。日本政府のプロパガンダは信用しませんでした。日本が満州国を建国しても世界の各国は承認しませんでした。日本と他の数カ国だけが「満州帝国」と言っていただけですよ。日本政府は満州へ行くことを国民に奨励していましたがね。
政府が言うことを100%信じた人もいましたが、僕や友人の半分は全く信じませんでした。僕の印象では、まわりのほとんどの人が政府の言うことを信じていませんでした。なぜならプロパガンダだと分かっていたからです。みんな、口に出さなかっただけですよ。言ったら怒られますからね。
僕も自分の考えは言いませんでした。もし誰かにそのことを話したら、「貴様、アメリカ人だからアメリカへ帰れ」って言われかねなかったですからね。周りの人は僕がアメリカ生まれだって知っていたので、幼いながら言動にはずいぶん注意しました。


―日本では、イソベさんがアメリカ生まれだということで差別を受けましたか。

学校の先生やまわりの大人たちが、特に何を言ったわけではありませんが、なんとく雰囲気で感じました。いじめはありましたが、殴り合いのケンカとはありませんでした。友人とは仲が良かったですよ。けれど、何かがあると他の人たちから「アメリカに帰れ」と言われました。
学校にはいろいろな教師がいました。特に5、6年の担当の先生はとても洗練されていました。日本政府が言っていることに対して、本当は何が起きているのか分かっていたようでした。
当時は、帝国主義について討論することさえできない時代でした。「天皇陛下が神だなんて科学的にも信用できない」と幼い僕は思っていました。けれど、毎朝の朝礼では「天皇陛下万歳」ってやっていました。みんなもやっていましたが、心の内は分からないですね。「これをやれ」と命令されたら、討論しないでやりました。
1937年に支那事変が始まり、静岡・歩兵第34連隊の兵士の宿泊所が不足しました。そこで、兵士は二人ずつになって民家に泊まりました。僕の伯母の家にもやってきました。彼らは僕がアメリカ人だって知っていましたが、いろいろと話してくれました。彼らに偏見はありませんでした。二人が帝国主義や軍国主義を信じているようには、僕には見えませんでした。「命令だから仕方がない」、そんなふうに見えました。
戦死した兵士たちは遺骨で町に戻ってきました。何十人、何百人の遺骨が運ばれました。この時、僕ら学生は道に並んで、遺骨となった兵士たちを迎えました。数百人単位の遺骨が帰ってきたことが、5、6回はありました。


―そういう体験をすると、「戦争に何の意味があるのか」、「政府が打ち出した政策は本当に正しいのか」など、子供ながらも疑問を持ちますよね。 1939年春、イソベさんは兄弟と共にアメリカに帰国しました。長年、会えなかった両親にもやっと会えました。両親のことが恋しかったのではありませんか。

普通の家族だったら、親子は関係が深いでしょうし、再会したらワンワン泣くのでしょうけれど、僕の家族はずっと離ればなれだったので、そういうことが全くありませんでした。
 小さい頃から「お前の母親はアメリカにいるんだよ。仕事をしてお金を日本へ送ってくれているんだよ」と、親戚から聞かされました。伯母は母親のようにいろいろなことをしてくれましたが、伯母は伯母でした。僕は父にも母にも愛情を感じることが全くできませんでした。けれど、末っ子の妹は日本へ送られず、ずっと両親の元で育ったので、明らかに僕ら上の4人兄弟とは、両親に対する気持ちが違います。
 親がアメリカで働いて、子供には日本で教育を受けさせる。なぜ、僕はアメリカの教育を受けず日本へ送られたのか、未だに理解できません。アメリカで子供を教育するのが普通ではありませんか。
 だから日系二世と日系一世では考え方が違うんですよ。


(つづく)


■新移民法 1924年に施行。年間に各国から受け入れる移民の上限数を、1890年国勢調査時にアメリカに住んでいた各国出身者数を基準に、その2%以下にするもの。特にアジア出身者については全面的に移民を禁止する条項が設けられ、当時アジアからの移民の大半を占めていた日本人が排除された。  ―ウィキペディア参照

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写真・文・構成 Tomomi Kanemaru



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JANM・ジャニム(全米日系人博物館)
Japanese American National Museum
日系アメリカ人の歴史と体験を伝えるアメリカ初の博物館。アメリカの人種と文化の多様性に対する理解と感謝の気持ちを高めることが目的。ボランティア・ガイドに支えられ、訪問者は展示にはない興味深い話を聞くことができる。

100 N. Central Ave. Los Angeles, CA
・213-625-0414
http://www.janm.org
開館:火・水/金・土・日 11:00 ~17:00
木 12:00 ~20:00
休み:月曜
料金(企画展も含む):一般9ドル、シニア&学生&子供5ドル、メンバー無料
*木曜17:00 ~20:00、毎月第3木曜は無料
交通:メトロ電車:ゴールドライン「Little Tokyo / Art District」下車。徒歩1分
駐車場:あり。博物館前、他多数(有料)

★「ボランティア・ガイド」に関心のある方は、下記まで。
213-830-5645

2014/08/16 掲載


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