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日系社会のフロンティアを尋ねる vol.5 - トーマス・イイノ パシフィックコマース銀行理事長
日系社会で活躍するリーダーと各界で活躍する日系リーダーを尋ねるシリーズ。第5回目は、パシフィック・コマース銀行の理事長でもあり、米日カウンシル(U.S.-Japan Council、以下USJC)の理事長でもあるトーマス・イイノ氏にインタビューした。

トーマス・イイノ

日系三世。1965年UCLA卒業。デロイト・トウシュ・トーマツ会計事務所に勤務。大手日本企業の米国進出と日系人経営企業の成功に貢献。カリフォルニア州政府関係役職、JANM理事、敬老シニア・ヘルスケア理事、日米文化会館理事長を歴任。2013年旭日中綬章受章。



日本の若者の国際化支援

—ご家族について。

私の両親は日系二世です。父は日系アメリカ人(以下、日系人)で初めてCPA(米国公認会計士)を取得し、母は初代の二世ウィーククィーンでした。私は第二次大戦中の生まれで二人の弟がいます。私たちは両親から「日本人ではなく、アメリカ人として生きなさい。社会に溶け込みなさい」と言われて育ちました。当時、日本人として生きることは大変難しい時代でした。父は非常に数字に厳しい人で、ファイナンスをする際の数字は正確でなければならない、道義にかなっていなければならないと教えてくれました。母はとても社交的な性格で、あらゆる文化と交わり、どんな人とでも仲良くしなさいと言っていました。

—ボランティアでさまざまな団体のリーダー職に就いていますが、ボランティアを始めたきっかけは。

1980年代初頭、私はアメリカの四大会計事務所の一つ、デロイト・トウシュ・トーマツ会計事務所の南カリフォルニア支社国際部門を任されており、クライアントの多くが日系企業でした。そこで、私自身、日系コミュニティーと関わった方がいいのではないかと感じるようになりました。当初は各団体の理事たちと知り合い、ビジネスの手助けをしようとボランティアを始めたのですが、次第にビジネス的な関わりから個人的な関わりへと変っていきました。

—USJCが他の日系団体と違う点は。

JANM(全米日系人博物館)、敬老シニア・ヘルスケア、日米文化会館は地元密着の団体なので目的も地元に根ざしています。USJCの目的は、日系人と日本の関係向上と米日関係の発展で、非常に広範囲にわたります。私は、USJCはもっともパワフルな日系団体だと思います。米日関係は、長期にわたりUSJCによってずいぶん助けられるのではないでしょうか。

—イイノさんがUSJCの活動で、力を入れている活動は何ですか。

第一に、TOMODACHIイニシアチブです。なぜなら、ここ4、5年で日本の孤立化が再び進み、内にこもっているように見えるからです。特に日本の若者は留学もせず、非常に国内的思考に見えます。20年前、日本は率先して留学や駐在員を海外に派遣していました。これはとても大きな変化です。私の見解ですが、日本は輸入に頼る比重が大きいので、日本人は国際化しなければなりません。選択の余地がないのです。次世代はもっと国際的な思考を身につける必要があります。もっと海外に進出しなければなりません。だからTOMODACHIイニシアチブが重要だと考えます。TOMODACHIイニシアチブの当初の目的は、東日本大震災で被災した東北地域の子供たちを支援することでしたが、とても有意義なので対象地域を日本全国に広げました。日本の若者をアメリカに招き、経験をしてもらう。経費は我々が負担するので経済的心配はいりません。将来的に、日本文化のためになると私は信じています。同時に、TOMODACHIイニシアチブはアメリカ人の訪日プログラムも行っています。第二には、在米日系人リーダー訪日プログラムです。全米から選ばれた10人ほどの日系人リーダーが訪日し、実り多いツアーに参加して、勉強します。帰国後は、米日関係に貢献します。

—日系社会で危惧することは。

日系人はアメリカで成功し、銀行家、弁護士、会計士、科学者とトップレベルが揃っています。しかしメディア業界ではリーダーシップをとる日系人がいません。また選挙で選出された政治家が不足しています。
政治家に関して日系人の数は多いのですが、ほとんどが官庁に指名された政治家です。日系人のなかで政治家を志す人はあまりいません。アメリカでは二つのエリアが人々の思考に影響を及ぼします。一つはメディアで、どのように考えるか人々に影響を与え、もう一つが選出された政治家です。市民はオバマ大統領の話には耳を傾けますよね。我々の意見を反映させることが大切です。この点で、ユダヤ人は非常に優れています。映画業界や政界にはユダヤ人リーダーが多いです。彼らの目的は、自分たちの意見をアメリカに反映することです。これはとても重要なことです。中国系、韓国系、フィリピン系など他のアジア系アメリカ人たちは、政治活動を活発に行います。なぜなら、彼らは自分たちの意見を反映させなければならないと知っているからです。理解しているからです。


有能な日系人は日本にとっても有益

—日系人の将来は。

「プライベートでは家族や友人にあまり日系人がいないのですが、私の場合、ビジネスやボランティアで日系人や日本人と関わりがあったので、日本に興味がありました。関わりを持つうちに日系コミュニティーに貢献しようと決意したのです」
日本についてもっと知りたいという人が、日系コミュニティーのなかに増えるでしょう。南カリフォルニアでは、50%以上の日系人が他人種と結婚していると言われています。これらの夫婦の子供は、人種がミックスしたハパ(日本ではハーフと呼ばれる)です。親は、子供がハパだからこそ、日本についてもっと知る必要があると感じるでしょう。JANMでもハパについての展示が増えたようですし、ハパの問題について追求しているようです。ハパはミックスですが、文化的要素が非常に重要になってくると考えます。日本への興味が薄い世代は、私の世代、日系三世です。これは戦争の影響です。一例を挙げると、約15年前、UCLAのアジアン・アメリカン・スタディで日本講座の開設が決定したときのことです。寄付金集めに私も協力することになりました。UCLAの日系人卒業生を訪ねて寄付をお願いしたのですが、なかなか上手くいきません。「UCLAに寄付をするなら自分の子供の学校に寄付したい」と言うのです。そこで私は「日本人だから、寄付するべきです」と言うと、「友人も白人だし、日本人でいる必要性がない」という答えが彼らから返ってきました。そこで私は、三世たちが日本とつながりがないことに気付いたのです。最近は自分の祖国について学ぶ三世が増えました。USJCもプログラムを展開していますが、理由の一つに安倍内閣になり、日本は安定し競争力があると見えてきたことが考えられます。日本の企業もアメリカに戻りつつあります。

—日系人と日本人の関係について。

より大きな地域社会と緊密に関わり熟知することはとても大切です。日本の企業家、教育者、領事、大使などが訪米した際に、我々、日系人が日本人を援助する唯一の方法は、アメリカのコミュニティーで卓越し尊敬され、州知事や市長、企業のトップなどを紹介できるようにすることです。これが日系人の特権です。アメリカで日系人がより有能であればあるほど、日本にとってもより有益なのです。日系二世のほとんどは、祖国「日本」に興味がありません。“自分たちはアメリカ人である”という意識を強く持っています。戦時中は非常に困難な時代だったのです。その後はリトル東京に集うことが、二世にとって心地良かったのです。UCLAの学長や市長に会いにいこうという二世はなかなかいませんでした。

しかし三世は違います。“アメリカ人”です。社会的にも高い地位に就き、今やアメリカの中枢にも進出しています。日本から「◯◯氏を紹介してほしい」と依頼があれば、簡単にできます。日本にとって、とても有益です。現在、我々は「米日関係を支援しなければならない」という強い想いを持っています。私から見て、日本は再び本格的に目を覚まし始めたようです。日本との関係を高める素晴らしい機会があるでしょう。同時に、日本はより一層アメリカの助けを期待しているのではないでしょうか。約20年前、私のクライアントは大手の日本企業でした。新企業が日本からアメリカに来るたびに、日本人がまっさきに連絡したのは白人のリーダーたちでした。日系人ではありませんでした。おそらく日本人は、日系人が十分高い地位にいると思わなかったのでしょう。また、20年前は、日系人も十分高い地位に就いていなかったかもしれません。

しかし、今日は各界のトップクラスに日系人がいます。現在、日本人がアメリカに来ると、まず最初に日系人とつながりを持ちます。それから白人のリーダーに会いにいきます。これはごく最近の現象ですが、すべてが以前とは違うのです。

=Tomomi Kanemaru

2014/03/08 掲載

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