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コラム

ピアノの道
Vol.16 音楽愛好家のパワー

2019-09-04

 “Who likes not his business, his business not likes him.”「好きこそ物の上手なれ」の対訳を検索してみたら、敢えて出てきたのが19世紀半ばの英国人の散文の引用でした。ポジティブアメリカ人が好きそうな概念だと思ったのですが、意外です。

 ことわざの有無はともかく、私は今、一週間「愛好家パワー」を目の当たりにして感動して帰って来たところです。マサチューセッツ州の避暑地の音楽祭で一週間アンサンブルのコーチングと演奏をして来たのです。子供の頃思い描いた「お城」そのままの豪邸で寝食を共にし、数十人の愛好家が講師を交えたアンサンブルで共演しながら学びます。参加者の多くは、音楽の学位を持っていたり、子供の頃のレッスン経験があったりしますが、中には70歳でチェロを始めたという80代の女性もいます。大学教授、国際機関の職員、弁護士、医療関係者、映画製作者...それぞれが素晴らしい経歴の持ち主ですが、ここでは皆、音楽学生。リハーサルや、食堂で時間制限のある食事などの、融通の利かない時間割の合間の寸暇を惜しんで、練習する音があちこちから響き渡ります。

 私がこの音楽祭に講師として参加させて頂くのは4年目です。参加者にはリピーターが多く、一年に一回、一週間の共同生活をすることで、彼らの人生の色々な場面に寄り添うことになります。「子供が結婚した」「孫が生まれた」という嬉しいニュースもありますが、「連れ合いを亡くした」「癌の診断を下された」という様なお話しも聞くことにもなります。社会問題に積極的に取り組んでいる参加者も多く、災害に専門家として関わったり、貧困層の生活向上のためのボランティア活動に精力的な参加者もいます。そういう皆が、この一週間は音楽に集中するために集まるのです。彼らの一生懸命な練習と演奏を見ていると、今まで演奏技術の良し悪しだけで音楽家を判断していた自分が恥ずかしくなります。音楽の本髄とは、人間らしく生きるための原動力であることでは無いか。講師という立場にありながら、学ばせて頂くことの方が多い様な一週間です。
音楽って本当に凄いんです。

この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。
https://musicalmakiko.com/en/?p=1180


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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