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コラム

編集部
『 命の電話 』友の会 ①    

2019-01-05

日本語で、匿名で、無料で相談

 アメリカで唯一、日本語で、匿名で、無料相談ができる日系ヘルプライン『命の電話』のオフィスには、毎日、さまざまな相談が寄せられ、1986年の開設から相談件数は5万件を超えた。アメリカでの暮らしの中で悩んだ時、困った時、「誰かに日本語で相談したい」と思った時、電話をかければ、電話の向こうにいるリスナーと話すことができる。録音された音声ではなく、生身の人間と日本語で話すことができる。

 今回は、日系ヘルプライン『命の電話』の運営を支えるボランティア・グループ「『命の電話』友の会」の半田俊夫会長と渡邉京子共同会長に話を聞いた。


衝撃的な事件が契機

半田俊夫さん 『命の電話』友の会会長

 1985年にサンタモニカで、若い日本人の母親が親子心中をした事件は、当時のロサンゼルスの日本語を話す日本社会に大きな衝撃を与えました。

 母親は命を取り留めましたが、二人の小さな子供は亡くなってしまい、母親は二人の子供を殺した殺人罪で起訴されました。

 日本では、親が「自分が死んだ後に残された子供が悲惨な人生を送るくらいなら子供も一緒に死のう」と考えて親子心中をするケースがありました。この日本の「親子心中」について、なんとかアメリカの裁判でも理解してもらおうという運動がロサンゼルスの日系社会を中心に起こりました。

 そのためには良い弁護士をその母親につけなければならないと、弁護士費用を賄う募金活動が始まり、私も募金したのを覚えています。

 この事件が契機となって、日本語を話す“日本語族”がなんとかしなければならないと、日本語で相談ができて、なおかつ匿名で相談ができる日系ヘルプライン『命の電話』が、ロサンゼルス・リトル東京にある社会福祉の非営利団体「リトル東京サービスセンター」(以下、LTSC)に開設されました。

貴重なサービスの危機

 私が、日系ヘルプライン『命の電話』と関わったのは、2005年からです。
 私は、当時、「パサデナセミナー会」という会を主宰していて、毎月、ゲストスピーカーを招いて、セミナーを開催していました。

 2005年、私は、LTSC職員のキム・アンナさんにゲストスピーカーをお願いしました。キムさんは、2004年に自叙伝『牡丹江梨恵13歳の夏』を出版されて、私はこれを拝読していたんです。これが、契機となりました。

 キムさんは朝鮮生まれで、1944年には在満州日本人学校の牡丹江高等女学校に入学しました。1945年にソ連が侵攻してくると、命からがらソウルまで逃げたそうです。韓国で結婚して、1984年にはアメリカに移住。勤務先のLTSCでは日本語も話せるので日系ヘルプライン『命の電話』を主担されました。

 キムさんはセミナーで日系ヘルプライン『命の電話』について話してくださったのですが、終わり頃に、日系ヘルプライン『命の電話』が存続の危機に立たされているので資金集めをしているとおっしゃいました。

 私はこれを聞いてとても驚いて、「この貴重なサービスがなくなってはいけない、火を灯し続けなければならない」と思いました。

 この後、セミナーにご参加くださっていた入江健二医師をはじめ7、8人が集まり、「『命の電話』を支援する会」(以下、「支援する会」)を結成しました。入江先生が会長、私が副会長になり、キムさんも「支援する会」のメンバーとなりました。

運営資金を募るイベント

 当時のLTSCプレジデントのビル・ワタナベさんと数回の話し合いを持った結果、LTSCが運営していた日系ヘルプライン『命の電話』は独立し、「支援する会」が、経済的に援助することになりました。日系ヘルプライン『命の電話』を継続するためのオフィスのレント、電話代、広告費、他の全ての経費を「支援する会」が賄うことになったのです。

 運営資金を集めるために、バザーやコンサートなどのイベントを開催しました。イベント準備は、本職を持ちながらのボランティア・グループ「支援する会」にとってはとても大変な作業でしたが、入江会長の下にメンバーたちはとてもよく働きました。

 このお陰で、多くの資金が皆様から集まり、また、毎年、ご寄付くださる方々も現れて、現在も運営をなんとか継続することができています。

 「支援する会」は資金集めに一区切りがついた時に一度解散をしたのですが、再び立ち上げ直して現在は「『命の電話』友の会」(以下、「友の会」)という名称で日系ヘルプライン『命の電話』の支援活動を続けています。

三位一体で存続支援

 日系ヘルプライン『命の電話』は、三者が協力して存続しています。

 まず一つ目は、相談者からの電話を受けるボランティアのリスナーです。3つのシフト制で相談を受けていますが、リスナーの数は不足しています。リスナーは名前も顔も公開しませんし、専門家のトレーニングを受けてから、リスナーとなっていただくので、ご関心がある方は、ぜひ、ご連絡いただければと思います。

 二つ目は、我々「友の会」です。日系ヘルプライン『命の電話』の運営を資金面で支えています。一人でも多くの方に日系ヘルプライン『命の電話』について知っていただきたいので、広報活動をするのも「友の会」の役目です。

 そして、三つ目は、LTSCです。ご相談によって、LTSCが持っているさまざまな分野の情報を、LTSCを通じてコーラー(電話をかけてくる人)に照会できます。

 また、新しいリスナーのトレーニングでは、LTSCに関係する専門家などが講義をしてくれます。
 そして、日系ヘルプライン『命の電話』にご寄付いただいた時は、非営利団体のLTSCの銀行口座をお借りしています。我々のような草の根的な会が非営利団体になるのは難しいので、このような体形をとっています。LTSCを通すと、寄付金が課税所得控除の対象になります。

 このように、三位一体で、日系ヘルプライン『命の電話』が存続しています。

命を守ることが『命の電話』の根本

 『命の電話』は命を守ることが根本です。日本にある『いのちの電話』には「自殺」を考え始めた人からも電話がかかってくるそうです。きっと、何か助けの言葉を無意識に期待してでしょう。日本では自殺者が多いこともあって、『いのちの電話』の存在と名前は尊敬を受けています。

 ロサンゼルスを拠点に始まった『命の電話』は、そこから取った名前で契機に重みがあります。我々も“初心忘るべからず”の立ち位置で『命の電話』の名前を今後も大事にしていくことが大切なように思います。
 全米で、日本語で相談できる無料の電話相談は日系ヘルプライン『命の電話』だけです。だから、この灯は消してはいけないと思い、活動しています。(①に続く)


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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