NikkanSAN_TopBanner_2023-05-07

ロサンゼルスの求人、クラシファイド、地元情報など

日刊サンはロサンゼルスの日本語新聞です。 記事は毎日更新、求人、クラシファイドは毎週木曜5時更新。

コラム

苦楽歳時記
第224回 タンシチューとダッチオーブン

2016-11-09

 昔、ハーバーシティの陋居(ろうきょ)に住んでいたころ、涼風いたる秋日の午後、アンニュイなひとときにオレンジ・カプチーノをたしなんだ。リビングルームにはメロウなジャズ・ボサノバが流れている。

 天窓からは、暮秋の日差しがゆるやかに差し込んで、キッチンのアイランドには柔らかい陽だまりできていた。

 昼下がり、料理の手伝いをしてくれる、アンソニーの鼻歌が聞こえるころだ。今晩の献立はタンシチュー。まず、庭先にダッチオーブンを運んでから、ディナーの仕込みにとりかかることにする。

 食材のほとんどが、家族ぐるみで付き合っているスパダロ・ファミリーからのものだ。いつも新鮮で厳選された食材をわけてくださる。

 ここで、過ぎし日の回想を話したい。詩人の竹島昌威知先生とともに、大阪阿倍野の『グリル・マルヨシ』で玩味したタンシチューの味は忘れ難い。

 その風味ときたら、潤いのある芳ばしい香りが小波(さざなみ)のようにただよってくる。濃厚なコクと小粋な妙味は、まるで調和のとれたバロック音楽のように風雅で、かつなよやかである。これほどまでに、赤ワインとマリアージュするタンシチューはまれだ。王侯貴族の料理番が作っているのかと思い違いしてしまうほどに、品位に満ちた美麗な追憶のかなたの味わいがした。

 わが家では、感謝祭に味わうターキーもタンシチューも、滋味が増すダッチオーブンを使う。特別な日には、チキン、ラム、ビーフ、それから魚もダッチオーブンで調理する。

 何かあると隣のアンソニーと、その仲間たちが手伝ってくれる。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
Facebook   Twieet

新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




[ 人気の記事 ]

第230回 碧い目が見た雅子妃の嘘と真

第249回 尻軽女はどこの国に多いか

特別インタビュー アシュラムセンター主幹牧師・榎本恵氏 後編

NITTO TIRE 水谷友重社長 ロングインタビュー① アメリカについてよく知ることが大切

第265回 天才と秀才、凡才の違い

第208回 日本と北部中国に多い下戸

第227回 グレンデールに抗議しよう

特別インタビュー アシュラムセンター主幹牧師・榎本恵氏 前編

第173回 あなたの顔の好みは?

NITTO TIRE 水谷友重社長 ロングインタビュー③ アメリカについてよく知ることが大切



最新のクラシファイド 定期購読
JFC International Inc Cosmos Grace 新撰組3月 Parexel pspinc ロサンゼルスのWEB制作(デザイン/開発/SEO)はSOTO-MEDIA 撃退コロナ音頭 サボテンブラザーズ 





ページトップへ