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コラム

苦楽歳時記
vol132 そば屋にて

2015-01-29

 先日、家人とともに、そば屋に訪れたときの話である。ざるそばを食べ終わってからウェートレスにそば湯を頼んだところ、返事をせずにウェートレスは厨房に入っていった。

 しばらくして厨房から出てきたウェートレスは、のっけから「そば湯捨ててしまいました」とだけ告げてから、蚊の鳴くようなか細い声で「すみません」と結んだ。

 ざるそばを食べ終えてから、そば湯をいただくのを楽しみにしていたのに、捨ててしまったとあれば仕方がない。僕は少し気分を害しながら、ここはいさぎよくあきらめるしかないと思った。

 店を出てから車の中で、先ほどのウェートレスの接客態度について推測してみた。手打ちそばを売り物にしているこの店は、顧客のほとんどがそば湯を楽しみにしているはずだ。まず、お詫びの仕方がなっていない。

 「手前どもの手違いにより、間違えてそば湯を捨ててしまいました」。その後に、「まことに申しわけございません」と、丁寧に謝れば良いだけのことである。

 「そば湯捨ててしまいました」だけの真摯さのない言い回しであると、後で、「すみません」
とお詫びしても赤心に欠けるのである。そば湯も料金に含まれているのだから、ここはひとまず熱誠をこめて、謝る姿勢を見せてほしかった。

 数年前に、空いている頃合いを見計らって、別のそば屋に入店したときも、ウェートレスが水を運んできた際に、僕たちの顔を見ないで本日のおすすめを早口でしゃべり始めた。質問をするひまもなく、ウェートレスは足早に背を向けて本日のおすすめの続きをしゃべりながら、ひょうひょうと厨房へと姿をくらましてしまった。

 開いた口が塞がらない無礼千万な接客である。久方ぶりに知己と一緒に、美味しいそばを賞味するのを心待ちにしていたのに、しょっぱなから心証を害する言動をくらってしまった。

 このように接客態度が不躾であると、せっかくのひと時が台無しになってしまう。うちの店は美味いと自負があるから客足は衰えない。繁盛しているから、つい不遜になるのであろうか。

 ウェートレスとは本来、笑顔を絶やさずに物腰は柔らかく、心くばりの熟手であると思う。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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