苦楽歳時記
vol127 ひと足早い「雑煮」について
2014-12-19
雑煮は各地によって様々だが、関東地方ではすまし汁仕立ての雑煮。関西地方は古来より白味噌仕立ての文化を継承している。全国的に見ると、すまし汁仕立てが六十八パーセント。
関西では丸餅を焼かないで汁に入れる。対して関東は焼いた四角い切り餅(角餅)を使う。東日本は角餅、西日本は丸餅を用いる。ウィキペディアによると、「餅を焼かないのは関西と広島を除く中国地方」。
なぜ、関東では角餅で関西では丸餅だろうと文献をひもといてみた。元々は関東でも丸餅が使われていた。往時の江戸は人口が集中していたので、丸く作る餅だと手間がかかってしまう。四角に切ることだけで、調理の効率が良い角餅が考案されたという。
文献によると丸餅と角餅、どちらを使うかの境目は岐阜県関ヶ原といわれている。
丸餅のいわれは、満月をかたどった円という形から豊作を祈願。この形が魂を象徴する形であることから、元旦に丸餅を食することによって、神の力を得られると言い伝えられている。
関東のすまし汁仕立てよりも、関西の白味噌仕立ての方が歴史は古い。雑煮は元来、武家社会における料理であり、武士は味噌をつけることを嫌ったために、すまし汁になったようだ。やがて参勤交代により、すまし汁仕立ての雑煮が各地に広まった。
僕の母が住んでいる奈良の雑煮が一風変わっている。白味噌仕立ての汁に、大根、にんじん、里芋、豆腐、煮た丸餅を入れて、なんと甘いきなこをつけて食べるのである。
高松(香川県)の友人の所に正月に赴いた際、具だくさんの白味噌仕立ての雑煮の中に、あん餅が入っていたのには驚いた。
岩手県の雑煮も珍しい。具だくさんのすまし汁仕立ての中に、焼いた角餅を入れる。食するときには、甘いクルミの醤油だれにつけていただく。
昔わが家では、父が関東の出身であるから、雑煮はすまし汁仕立ての角餅と紅白のかまぼこと、そして三つ葉。シンプルな雑煮で正月を祝ったものだ。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。