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コラム

苦楽歳時記
vol124 俳句のこと

2014-11-28

 僕が本格的に俳句を始めたのは大学生の頃である。林 富馬氏の弟子にあたる俳人、近松寿子氏に手ほどきを受けたのが、俳諧連歌を始める誘い水となったのである。

 やがて、鮨屋の二階の座敷で遊俳に興じた。連衆は四人ほどであったが、僕はいつでも黒一点であった。

 昔、NHKの『日本語なるほど塾』を観ていたら、日本語で小説を書く米国人、法政大学教授のリービ英雄さんがゲスト出演されていた。リービさんは同時多発テロの日、日本からアメリカに向かう機上にいた。全米の空港が全て閉鎖されたために、リービさんはカナダで数日間過ごすはめになってしまった。

 マンハッタンにある世界貿易センタービルが崩壊する衝撃的な映像をホテルの部屋で観たリービさんは、その状況を作家として文章で表現してみたいと思うのであるが、適切な言葉がなかなか浮かんでこない。しばらくしてひらめいたのが芭蕉の俳句、「島々や千々に砕きて夏の海」。

 リービさんは中七の「千々に砕ける」と言う表現が、まさしく、この度のテロを表現するにふさわしい言葉であると力説されていた。この話の後でリービさんは、芭蕉の俳句における宇宙観についても言及されていた。

 僕はテレビを観ながら、何とも言いがたい違和感を覚えたのである。まず、俳句は芭蕉の作ではな
い。「島々や千々に砕きて夏の海」は、芭蕉が松島で作った唯一の句とされているが、ひもといてみるとすぐに解る。芭蕉は『奥の細道』の本文で、ここ(松島)では俳句を詠まなかったと断言している。

 芭蕉は、「絶景の前では黙して語らず」という、中国の文人的姿勢に感化されていたので、日本一の景勝地とされる松島においては、黙して語らない姿勢を貫いたのである。従って、本文には同行した弟子の河合曾良(そら)の「松島や鶴に身をかれほとヽぎす」を採用している。

 また、芭蕉の俳句における宇宙観の一つは、黙して語らない「無」を貫くことにあった。

 世界的にも知られている日本至上最高の俳諧師、俳聖、松尾芭蕉は三重県伊賀市の出身。本日、十一月二十八日は、松尾芭蕉の祥月命日『芭蕉忌』。時雨忌、桃青忌、翁忌とも言う。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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