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コラム

苦楽歳時記
vol118 抱きしめてくれた

2014-10-20

 このところ、外食はひかえるように心がけている。正確には先立つものがないので、ひかえなくてはならなくなった。珍味佳肴(かこう)なものがいたって好きな僕にとっては、かなり厳しい状況が続いている。

 今年に入ってから糊口をしのぎながら生計を立てている。働かざるもの食うべからずというが、そういうわけにもいかないので、朝は粥か茶粥。昼は抜きで、夜は一汁一菜の膳をいただいている。

 家人と娘が粗食につきあってくれるのだが、家人は星をいただくほど働いているし、娘は育ち盛りのため、栄養価の高い食事を摂らなければならない。

 僕がストロークで倒れてから、検査の結果ステージ4の癌腫を発見。甲状腺より端を発して、脳、肺、リンパにも転移。後に骨にも転移した。一刻を争う事態になって、ストロークの治療は後回しにされたのだ。医師の判断が正しいことはわかっている。

 数ヵ月後、フィジカルセラピーを始めるにしても、週に一度か二度ていどだ。後になってわかったことであるが、ストロークに陥った場合、発症直後に毎日リハビリを施していると、運動能力が比較的改善しやすくなるという。 

 僕が悪疾に倒れてから丸六年。働くこともできずに今まで過ごしてきたが、癌腫のことは今のところは落ちついている。四ヵ所に転移したところについても、特に異常はみられない。右半身麻痺になっていなければ、現役続行なのにとじくじたる思いにかられた。いくら信仰があっても生身の身体だ。心がなえてむなしくなってくる。

 そんなある日、デュオ高瀬の賛美曲を聴いていたら、優しかった父の面影がにわかに甦ってきた。追憶の陽炎(かげろう)が、ほのかに立ちのぼり一掬の涙がこぼれおちた。心づくと晩秋の夕焼けのように、せつなくて哀しい心情の中をさまよっていた。

 しばらくして聖書の言葉をそらんじてみた。

 「患難は忍耐を生み出し、忍耐は練達を生み出し、練達は希望を生み出すことを知っているからである。そして、希望は失望に終わることはない。なぜなら、わたしたちに賜っている聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからである」

 聖書の御言葉が、僕を優しく力強く抱きしめてくれた。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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