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コラム

苦楽歳時記
vol112 愛の奉仕者

2014-09-04

 一九九七年九月五日、夕焼けの美しい季節にマザー・テレサは八十七年の生涯を閉じた。

 「なくても与える」を信条に半世紀余り、自らの持ち物はサリー三着、ロザリオ、聖書、修道会会憲、そして洗濯用のバケツのみであった。

 「より少なく持てば、その分、より多くを与えられる。より多く持とうとすれば、より少なく与えることしかできません」

 彼女の含蓄ある言葉が、きょうも夕映えに甦る。

 巷でアメリカン・ドリームと言えば、より多くを得るための、野心家たちの魅力あふれるロマン。事業の成功に伴い、高級住宅街に豪邸を構えて高級車に乗り、別荘や自家用機導入へとその我欲は尽きない。

 「金持ちになった貧乏人は、贅沢な貧しさをひけらかすであろう」。フランスの詩人ジャン・コクトーは、より多く持とうとする者に対して痛烈な皮肉をあびせた。

 キュリー夫人もまた苦学する中で、より多く持つことが目的ではなかった。ガスもなければ電灯もない。厳冬には石炭を買うためのお金にも事欠き、貧乏のどん底でまさに必死の闘いをした。後に夫の協力を得てラジウムを発見、ノーベル賞を受賞する。

 ラジウム抽出法の特許をとり、会社を設立して製造すれば巨万の富を築くことができたが、ラジウムは病気の治療に使うので、病人の足元につけこむことは化学者とクリスチャンの精神に反するとして、誰からも一切の権利金を取らずに簡素な生活を送った。

 ヒルティは『人生論』の中に、非教養の目印となるものをいくつか挙げているが、その第一番目が「暮らし方が非常に贅沢である」ということだ。

 マザー・テレサもキュリー夫人も、いかなる困難な状況においても、惜しみなく施し、人々に分け与えることに、絶えず喜びが満ちあふれた人生の勝利者であった。

 マザー・テレサはかつてこう語っている。「必要なのは財産やお金ではなく、また、人々が与えてくださるものではない。そのものを与えさせようとする愛が必要なのです」

 愛の奉仕者は偉大であった。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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