後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第175回 マリンバ奏者、名倉誠人
2012-06-23
ニューヨーク在住のマリンバ奏者、名倉誠人を知っていますか。
木の音色を持つこの音板打楽器で世界をまたに活躍している日本人です。
片手に二本(または三本)のマレット(ばち)を握り、メロデイーと和音を同時に奏でます。
パサデナのボストンコートで彼の演奏会が先日、開かれました。ソルコム社長の水野穣さんを誘って癒しの音色に触れ、感動して帰りました。
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LAタイムズ(二○○八年十二月十五日付)は彼の芸術性を賞賛して次のように報じています。
「信じられない才能をもったマリンバ奏者、名倉誠人。
強靭なテクニックはもちろんだが、名倉を特別な存在にするのは、彼が様々なマレットから自由自在に生み出す、驚くべき色彩感とニュアンスの広がりである」。
この日の曲目には、ギターのためのプレリュード五番(H・ビラロボス作曲)、ロス初演の「森の影」(R・パターソン作曲)、「私が生まれた木々の森」(J・バンクス作曲)、チェロ組曲六番(J・バッハ作曲)などが組まれました。
プレリュード五番の二楽章とチェロ組曲六番四楽章サラバンドの美しさには聴きほれてしまいました。
とりわけトレモロ(同一音の小刻みな連打)を駆使したサラバンドは秀逸で、マレットの技が光っていました。
LAタイムズのいう「驚くべき色彩感とニュアンスの広がり」が、やさしく耳を包みました。
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名倉さんは八歳からマリンバを学び、武蔵野音大を経て同大学院を修了、英国王立音楽院の演奏家課程を首席で卒業。
NYヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディションに優勝、日本演奏家連盟賞、第一回松方ホール音楽大賞などに輝きました。
日本人奏者の一人に宅間久善がいます。鍵を部屋に忘れ、「ミー・アウト・キー・イン・ドア・ガッチャン」などと訴え、ホテルマンを困らせたそうです。
英国英語を上品に語る名倉さんに唯一欠ける資質は、宅間的マインドだけかもしれません。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。